抄録
症例は 89 歳,男性。労作後に右鼠径部痛が出現した。画像検査上右腸腰筋に石灰沈着と浮腫を認め右腸腰筋石灰沈着性筋炎と診断した。安静とNSAIDs内服で症状は改善したものの,3 週間後に左腸腰筋に再発した。NSAIDsに加えシメチジンを投与したところ画像所見も改善し,再発なく経過した。
石灰沈着性筋伳炎は肩関節で起こる肩関節伳板炎が最も多いが,近年石灰沈着性頸長筋炎やその他の部位での発症も報告されている。急性の鼠径部痛を診た際,頻度の高い鑑別疾患(筋骨格系の感染症や外傷,腹部臓器疾患等)が否定的である場合は,石灰沈着性筋伳炎の可能性を考慮すべきである。また,シメチジン併用後は再発なく画像上石灰化が縮小したことから,再発抑制にシメチジンが有効であった可能性がある。