抄録
帯状疱疹は,50歳以上の患者で罹患率が増加し,一部の患者で難治性の帯状疱疹後神経痛に進展するため,早期の抗ウイルス薬投与が理想とされる。2017年より本邦で使用されるようになったamenamevirは,約90%が肝臓により代謝され,腎機能による調節が不要であり, 腎機能障害を伴った高齢患者などに対しても選択しやすい薬剤と言える。このたび,帯状疱疹によって食思不振・脱水が生じていたところに,amenamevirによる治療が行われたのち,高度の意識障害を発症した 1 例を経験し,精査の結果,amenamevirに起因する脳症と考えられ, 同剤の中止により寛解を得た。同剤は,高齢者への投与に際しても副作用のリスクは低いと考えられているものの,本例の経験から,帯状疱疹の治療にあたって本剤を導入する場合,同疾患の重症度のみならず,それ以外も含めた患者の全身状態にも注意を払う必要があると考えられた。