抄録
小児の口腔内外傷の原因は歯ブラシ外傷が最も多い。歯ブラシには口腔内常在菌や食物残渣が付着しており,合併症として刺傷部に膿瘍を形成することがあるが膿瘍内に遊離ガス像を伴 う例は少ない。今回,抗菌薬加療開始後の画像検査で,右傍咽頭間に遊離ガスを認めた歯ブラシ外傷の幼児例を経験した。症例は 4 歳の男児である。歯磨き中に転倒し,歯ブラシで右頬粘膜を刺傷した。翌日から発熱,開口障害, 右頬部腫脹,頸部痛を主訴に受診し入院した。 白血球増多(16600/μL),CRP 高値(15.57mg/dL)を認め,アンピシリン / スルバクタムによる抗菌薬治療を開始した。症状は改善傾向であったが,第 8 病日の造影 CT 検査で右傍咽頭間に被包化された液体貯留と遊離ガスを認めた。抗菌薬加療の継続が必要と判断し第 15 病日まで投与した。歯ブラシ外傷の症例において創部の正確な評価および治療終了時期の決定に画像所見が大きく寄与する。