日本病院総合診療医学会雑誌
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第10回学術総会講演録
神経診察法の極意
長谷川 修
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2015 年 8 巻 2 号 p. 35-42

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抄録
神経診察も総合診療と同じで,病歴で診断候補を絞り込まないと,次に何をするかが決まらない。 必ずしも立派な医学用語にしなくても良いので,まず見たままを言葉で表現する。 Rom-berg試験は,閉眼によるふらつきの極端な変化を取り出せば良い。 「酔っ払いのような喋り方」は小脳障害を示唆する。診断へのアプローチは,解剖学的または病態生理学的に行うが,とくに前者が役立っことが多い。 小刻み歩行を見ると,パーキンソン病を想起する人が多いが,多発性脳梗塞による仮性球麻痺や正常圧水頭症でも出現する。どこが異なるかを観察してみると良い。 不随意運動を見たら,ぜひ言葉にする練習をしてほしい。舞踏病(バリスム),アテトーゼ,ジストニーは,不随意運動の程度とそのときの筋緊張の程度により種類が決る。 手の姿勢や歩行を観察するだけでも,多くの情報を得ることができる。 医療面接を行いながら,顔面の観察も行うと良い。Chvosteck徴候は,助産婦手位とともにテタニーでみられる大切な徴候である。 過換気に伴って,救急外来でしばしば観察できる。眼球運動の観察は,非常に多くの情報をもたらしてくれる。眼球がsmoothに動いていれば,運動系に大きな問題がないことがわかる。 感覚障害では,その分布を観察することが大切である。 ADLは,質問しやすい項目であるばかりか,ADLそのものがさまざまな負荷試験となる。 ADLが不自由になったり,自立しなくなったりした場合には,それが何の機能障害によるかを分析して理解する必要があろう。 「病歴を意味づけする」と「身体所見を言語化する」カをつけ,その上で経験を積めば,神経診察の達人になれる。病歴と神経診察から仮説を作り,その仮説を検証するために適切に検査を活用してほしい。
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