2019 年 20 巻 1 号 p. 32-36
転倒を予防することは極めて重要であるが、スリッパなどの踵の無い履物を使用することの危険性についての認識は、患者のみならず医療者においても乏しい。トヨタ記念病院では、多職種より構成された「トライアングルの会」が院内の医療事故防止活動を主導的に行っており、履物に特化した転倒防止活動に取り組んだ。歩行に関する安全な療養環境を標準化するための見本となる「療養環境のベストショット」を作成し、ラウンドによる巡視活動を行った。患者への啓発活動として、履物リーフレットを作成、院内イントラネットを利用しスリッパにおける転倒リスクを掲示し職員全体への注意喚起を行った。
その結果、転倒件数の有意な減少はなかったが、高い身体損傷レベルの事例は発生しなかった。履物に起因する転倒リスクを排除する防止活動は、有用な方法であることが示唆された。