2015 年 12 巻 p. 3-12
本稿は、『大学体育学』1号~10号に掲載された論文の記載内容について概観するとともに、掲載論文の文献リストから文献引用の傾向について検討し、『大学体育学』の今後の課題について考察したものである。『大学体育学』の掲載論文数は、6号以降に増加した。掲載論文の内容は、授業開発及び授業改善を目的として授業の成果や意義を検討したものがほとんどであり、授業成果の検討には前後比較研究が多く使用されていた。調査法による研究では、新たな尺度を作成してその信頼性・妥当性を検証しているものが2010年以降の論文でみられるようになった。掲載論文の約半数は個人の内的要因を測定する心理尺度や質問票などの心理学的変数を使用しているものであり、対人社会心理学的内容、行動心理学的内容、メンタルヘルス的内容の3つに分類することができた。掲載論文の引用文献数平均値は、研究資料等よりも原著論文の方が高かった。掲載論文に引用された学術雑誌で最も引用数が多かったのは『体育学研究』であり、次いで『大学体育学』、『大学教育学会誌』と続き、引用数第4位は心理学系の学術雑誌である『教育心理学研究』であった。『大学体育学』は、この10年で大学体育教員の間に定着し大学体育教育研究者にとっての学的拠りどころになりつつあるものといえる。今後は、他の学会誌掲載論文に引用されるような論文掲載が『大学体育学』の発展につながるものと考えた。