保健物理
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海水中における60Co, 106Ruおよび144Ceの物理化学的挙動に関する研究
木村 雄一郎小川 喜弘福井 正美辻本 忠本田 嘉秀桂山 幸典
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1988 年 23 巻 2 号 p. 105-119

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抄録
60Co, 106Ru (ニトロシルニトロ錯体, ニトロシルニトラト錯体, ニトロシル複核錯体ならびにクロロ錯体) および144Ceの各放射性核種について, 海水中における時間経過による物理化学形の変化をイオン交換膜を通した電気透析法, あるいは一次元高電圧濾紙電気泳動法により検討するとともにニトロシルルテニウム錯体についてはペーパークロマトグラフ法によっても研究した。
60Coは海水中において, 電気透析法ならびに濾紙電気泳動法によって時間経過に伴って加水分解によるハイドロオキシ錯体を含めて単一な陽イオン形ではなく, また海水中に存在する陰イオン, とくにSO2-と結合した電気的中性のイオン対 (CoSO42-) の生成が認められた。
106Ru-クロロ錯体は, 海水中において主として陰イオンおよび電気的中性形からなり, 陽イオン形はむしろ少なかった。しかし, 電荷をもっているものもコロイド形あるいは粒子形で存在するものが多かった。
ニトロシルルニテウムのニトロ, ニトラトおよび複核の各錯体の調製原液を濾紙電気泳動法によって調べた結果, 各錯体の化学形によってその存在状態に特徴がみられたが, また海水中投入後においては高次のニトロ, ニトラトおよび複核の各錯体は加水分解されて, それぞれ低次の錯体となることが示された。
144Ceについて電気透析法によって調べた結果, 海水中においても当初陽イオン形を示していたが, 時間経過とともに電気的中性形および陰イオン形がつくられ, 比較的大きなガラス器壁への吸着性を示した。
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