日本保健科学学会誌
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神経性食思不振症に合併し高圧酸素療法が奏効した腸管気腫性嚢胞症の1例
吉澤 寿
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2007 年 10 巻 2 号 p. 116-121

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抄録

神経性食思不振症(AN)を基礎疾患に有する18歳の女性の症例において,比較的稀な消化管壁内に多発性の気腫を示した腸管気腫性嚢胞症(PCI)の症例を経験したので報告する。ANに伴う自己誘発性嘔吐,無月経,甲状腺機能低下を示し,慢性的な便秘も有していた。腹部膨満感が出現したため,某院救急外来を受診した。腹部単純X線写真,腹部CT検査にて,腹腔内遊離ガスと上行結腸から脾彎曲部に線状の腸管壁内ガス像を認め,PCIと診断され,高圧酸素療法(HBO)目的で当院紹介入院となった。安静,絶飲食とし,1日170分,週5日間のHBOを開始した。自覚症状の軽減を認め,第6病日より飲食を再開した。腹部単純X線写真にて腸管壁内ガス像の改善を認めたため第17病日退院とし,外来にて1日85分,週5日間のHBOを実施した。HBO開始1ヵ月後の腹部単純X線写真にて病変は消失し,HBOを終了した。本例は,高度の便秘症と自己誘発性嘔吐から腸管内圧上昇をきたし,PCIを発症したと推察された。

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2007 日本保健科学学会
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