日本保健科学学会誌
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育児開始期にある若年母の辛い体験を通した変化
小川 久貴子安達 久美子恵美須 文枝
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キーワード: 若年母, 育児支援, 辛い体験
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2011 年 14 巻 2 号 p. 63-76

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抄録

目的:産後2ヶ月までの育児開始期にある若年母の辛い体験を通した変化を見出すこととした。方法:参加者は,病院の健診などで研究者が関わった17〜18歳の無職の初産婦の内,研究同意の得られた者とした。産後2ヶ月の時点で,(1)出産後から現時点までの「辛い体験」,(2)辛い体験を通した「自己の変化」,(3)「将来の希望」について半構造化面接を行い,質的内容分析をした。結果:参加者は既婚9名(夫と同居7名)と未婚1名の計10名であった。育児開始期にある若年母は,(1)辛い体験に,授乳等をこなすことへの【見通しの立たない育児の過剰な負担】や【育児に対する義母の過干渉】,育児に無関心やDV加害者である【未熟な夫への不満】や【入籍しないパートナーへの怒り】,出産を極秘にする【パートナーの親の入籍に対する抵抗】,【若年母への非難の目】という6件のカテゴリーを得た。(2)自己の変化は,出産前のネガティブ思考から【母性意識や責任感による精神的強化】,義母等の【不仲な人間関係への目覚め】,自分の可能性を期待して【若年出産のポジティブ受容】,父性の未熟な夫との【別居や未婚の受容】の4件のカテゴリーを得た。さらに,(3)若年母の将来の希望のカテゴリーでは5件を得て,友人のように学生生活を楽しむための【進学】,車や介護ヘルパー等の【資格や免許の取得】,おしゃれ等の【生活費獲得のためパートタイマー】,子どもと一緒に【色々なことにチャレンジ】して楽しむが多かった。また,未婚や離婚に直面している若年母からは,子どものためにも【パートナーとのやり直し】を希望していた。結論:育児開始期にある若年母は多様な辛い体験を通して,育児や社会のスキルを身につけながら精神的に強化し,対人関係への適応や困難な現を受容して変化していた。助産師は,若年母の希望と成長を尊重して支援しながら,育児上の困難や,未婚及びDVから派生する諸問題を早期に察知して,関連機関と連携して対応することが求められる。

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2011 日本保健科学学会
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