抄録
本研究では脳性麻痺児における選択的股関節筋解離術の術前・術後4週の膝関節トルクを比較し延長筋と関節トルクの関係を明らかにすることを目的とした。大腿直筋と内側ハムストリングスを侵襲した歩行可能な脳性麻痺児8名14肢を対象とした。術前・術後4週時の膝伸展・屈曲トルクを測定し,関節トルクを従属変数とした反復測定二元配置分散分析・多重比較にて検討した。分散分析の結果,膝伸展・屈曲の運動方向に有意差があり運動方向と術前後の間に交互作用が確認された。術後4週時の膝伸展トルクは術前の値と変化はなく,膝屈曲トルクは術前よりも低下した。膝伸展トルクに変化がなかった理由としては解離術が膝伸筋群の一部に限定されたこと,内側ハムストリングス解離による膝伸展制限の減少により膝伸筋の活動が促されたことが考えられた。一方,膝屈曲トルクの低下は主な膝屈筋である内側ハムストリングスを解離することで筋出力が低下したためと考えられた。