日本プロテオーム学会大会要旨集
日本ヒトプロテオーム機構第3回大会
セッションID: S102-4
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エバネッセント波励起型スキャニングシステムを用いたレクチンマイクロアレイ糖鎖プロファイリング
*平林 淳久野 敦久野 しおり内山 昇江部 洋史堀尾 浩司
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抄録

細胞表層に存在する糖タンパク質糖鎖は、生物種・個体・組織ばかりでなく、細胞状態(分化度・悪性度)と密接に関連し、細胞機能を制御する上で重要な役割を担っていると考えられる。構造グライコミクスは様々な機能タンパク質に付加された糖鎖の構造を、工学的手法により簡便、鋭敏、網羅的に解明することを目指す。特に疾病に関連した糖鎖構造の変化を追跡するには、糖鎖構造を完全に決定することよりも、肝心の構造変化をハイスループットに信頼度高くとらえることの方が重要な主題となってくる。すなわち、重要な構造情報に焦点化した「糖鎖プロファイリング」の技術開発が求められる。我々はレクチンの糖特異性を詳細に解析する手法としてフロンタル・アフィニティ・クロマトグラフィー(FAC)自動化装置を島津製作所と共同開発しているが(NEDO糖鎖エンジニアリングプロジェクト)、ここで得られるレクチン・糖鎖間の相互作用データを活用し、糖鎖プロファイリングの実地解析に有用なレクチンマイクロアレイの開発を行っている(モリテックスとの共同研究)。既報のプロテインアレイや糖鎖アレイの検出原理は、おもに免疫学的検出法を基礎としているため、プロービング後の洗浄操作が必要となる。しかし、一般に知られているように、糖鎖・レクチン間の親和力は弱く(解離定数Kd>10-6M)、洗浄により失われてしまうことが予想される。また、糖鎖構造をプロファイルする意味では、多くのレクチンとの結合を単に定性的に調べるだけではなく、その相互作用を強〜弱に渡る広いダイナミックレンジで解析できることが、糖鎖構造に関する豊富な情報を取得するために望ましい。そこで本研究では、プロービング溶液を除去することなく相互作用検出をリアルタイムで液層検出可能な、エバネッセント波励起型アレイスキャニングシステムを検出原理として採択し、高精度・高感度なレクチンアレイの開発を行っている。Cy3標識した糖タンパク質プローブを各種調製し、本システムの性能評価を行ったところ、アレイ上のシグナルは定量的に検出され、かつレクチンの親和性や糖タンパク質糖鎖の種類をよく反映していた。現在、FACで糖特異性が調べられたレクチンを中心に、40種のレクチンタンパク質を選択しこれらを固定化したマイクロアレイを作製し、応用面を含めさらに詳細な検討を行っている。

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© 2005 日本プロテオーム学会(日本ヒトプロテオーム機構)
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