日本プロテオーム学会大会要旨集
日本ヒトプロテオーム機構第4回大会
セッションID: S2-2-2
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バイオインフォマティクス
LIMSを活用した質量分析スペクトルの理論ピークと蛋白質立体構造情報の統合的表示方法
*奥泉 盛司剣持 聡久佐藤 雅男宮崎 賢司上條 憲一
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抄録

 蛋白質は、アミノ酸配列に応じた立体構造を持っているため、親水性度やリガンドとの結合部位などの情報を活用することにより、より精度の高い蛋白質同定結果を得ることができると考えられる。本稿では、質量分析計を用いた蛋白質同定の信頼性を確保するために、検出されたピークについて対応する蛋白質立体構造中の配置を提示する手法について検討を行った。  我々は、質量分析計のスペクトルと二次元電気泳動等の結果を統合的に管理するLIMS(Laboratory Information Management Systems)ソフトウエアの開発を行い製品化を行った。このソフトでは、種々の実験データを統一元的に管理することでゲル画像やスポットマッチング情報、蛋白質同定結果、プレート分注情報などの各結果を統合して表示することが可能となっている。  MALDI-TOF MS質量分析計によって蛋白質同定を行い、同定に用いた質量スペクトル・ピークと、同定された蛋白質情報に基づいて、観測されるべき理論スペクトル・ピークをソフトウエアの画面上に重ね合わせて表示する手法を構築した。さらに、同定された蛋白質にリン酸化が想定された場合、表示した理論スペクトルのうちヒットしたピークについて、リン酸化部位を推定し、同定された蛋白質の立体構造上での配置を3次元的に表示した。これにより、その部位がリン酸化されやすい位置かどうかの確認を行うことができる。同定された蛋白質の立体構造がDB上に登録されていない場合、BLAST検索により、Structure Database:MMDBに登録されている相同性の高い蛋白質の立体構造を代替として使用した。ソフトウエア上では、同定された蛋白質の理論スペクトルや対応する配列に対して立体構造上の配置を合わせて表示するようにした。  実際に、リン酸化が推定された部位は蛋白質立体構造上において表面に近い部分に観察されたことを確認した。翻訳後修飾においては、酵素作用が広く知られているが、目的のペプチドについて立体構造上の配置を表示することより、翻訳後修飾などの受けやすさを考慮しながら同定の確認を行うことができる。  また、LIMSによって一元的に集められた解析結果、たとえば理論pI/MWと測定pI/MWから同定された蛋白質を統合的に判断することも可能となった。

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© 2006 日本プロテオーム学会(日本ヒトプロテオーム機構)
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