日本プロテオーム学会大会要旨集
日本ヒトプロテオーム機構第5回大会
セッションID: P2-47
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ポスター発表
腫瘍壊死因子-αの活性に及ぼす90番目のアミノ酸の影響に関する検討
*鎌田 春彦吉岡 靖雄柴田 寛子阿部 康弘野村 鉄也蓑輪 恭子鍋師 裕美中川 晋作角田 慎一堤 康央
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抄録

我々はこれまで、ファージ表面提示法を用いることで、機能性蛋白質の構造変異体を網羅的に発現したライブラリを構築し、その中から活性等に優れた機能性人工蛋白質の構築を行い、プロテオーム創薬に関わる基盤技術の開発を進めてきた。JHUPO第4回大会では、腫瘍壊死因子-α(TNF)の構造変異体を作製し、野生型TNFよりも生物活性に優れたmutTNF-α-K90Rを見出した。そこで本発表では、構造-活性相関追求のため、この変異体に含まれるアミノ酸の中で90番目のアミノ酸に着目し、その生物活性等を検討した。 【方法】昨年に報告したmutTNF-α-K90R中の90番目のアミノ酸を20種類のアミノ酸に置換するため、90番目のアミノ酸に相当する箇所を変異プライマーを用いたPCRにて改変した。改変したmutTNF-α-K90R に関して、大腸菌の培養上清を用いたスクリーニングから生物活性を持つクローンをスクリーニングした。活性の認められたクローンの精製タンパク質を作製し、TNFの2種類の受容体TNFR1およびTNFR2に対する結合性をBIACoreにて評価した。さらに、生物活性に関しては、TNFR1依存的な細胞死を誘導するL-M細胞およびHEp-2細胞を用いて検討した。さらにTNFR2依存的にGM-CSFの産生を誘導するPC60細胞を用いてTNFR2からの活性を評価した。 【結果・考察】大腸菌の培養上清を用いた検討から、変異mutTNF-α-K90Rのうち活性を示したクローンは、90番目のアミノ酸がリジンあるいはプロリンに変換されたものであった。その他のアミノ酸に置換された変異mutTNF-α-K90Rでは、活性が認められなかった。これらの3種の変異体の受容体への結合性をBIAcoreにて解析した結果、リジンに置換されたクローンでは、野生型と比較して、結合力が向上していた。また、生物活性においても、野生型と比較し、活性は3~8倍程度に上昇していた。一方、プロリンに置換されたものは、結合活性および生物活性は確認されたものの、その程度は野生型と比較し、ほぼ同等であった。以上の結果から、TNF中の90番目のリジンは活性に重要であり、TNF分子の安定化に関与している可能性が示唆された。

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© 2007 日本プロテオーム学会(日本ヒトプロテオーム機構)
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