日本プロテオーム学会大会要旨集
日本ヒトプロテオーム機構第5回大会
セッションID: S1-7-3
会議情報

プロテオミクスの新技術・翻訳後修飾の解析
ユビキチン化によりエンドサイトーシス・リソソーム輸送される細胞膜蛋白質の同定・解析
*藤田 英明松本 雅記中山 敬一田中 嘉孝
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

細胞膜上で機能する膜蛋白質には本来リソソーム輸送シグナル(チロシンモチーフ・ジロイシンモチーフ)は存在せず、したがってリソソームへと運ばれることがない。これらの細胞膜蛋白質の代謝回転は、細胞外プロテアーゼによるシェディングか非特異的なエンドサイトーシスによる分解に依存しているものとしてあまり注目されることがなかった。しかしながら最近、ユビキチン化がこれら細胞膜蛋白質のエンドサイトーシスやその後のリソソームへの輸送シグナルとして機能していることが明らかになりつつある。これまで一部のチロシンキナーゼ型受容体やG蛋白質共役型受容体を除いて、ユビキチン化を受ける細胞膜蛋白質の同定と解析はあまり進展していなかった。我々はエンドソームにおけるユビキチン化膜蛋白質の選別輸送を制御するAAA-ATPaseであるSKD1/VPS4Bの変異体SKD1(E235Q)のアデノウイルスによる発現系と、ユビキチン化蛋白質のプロテオミクス解析システムを利用して、ユビキチン化によりリソソームで分解される細胞膜蛋白質の網羅的同定に成功した。現在までに約20種類の膜蛋白質を同定しており、そのうち少なくとも2種類の膜蛋白質についてはユビキチン化部位まで同定した。また免疫蛍光染色や免疫沈降・ウエスタンブロットの結果、少なくとも9種類の膜蛋白質についてはSKD1(E235Q)の発現に特異的に局在の変化(エンドソームへの蓄積)およびユビキチン化(ラダーとして検出)を受けていることを明らかにした。これらの中には既にユビキチン化が報告されているものや、これまでユビキチン化はおろかリソソームでの分解についてもほとんど報告されていない膜蛋白質も含まれていた。また、シグナル伝達に関わる分子・受容体や、その異常分解産物が神経変性疾患を引き起こすものもあり、ユビキチン化による細胞内輸送や代謝分解制御がこれらの膜蛋白質の機能と強く結びついている可能性が示唆された。現在は同定した個々の細胞膜蛋白質について、 1) 実際にリソソームでの分解がその代謝回転に寄与しているのか? 2) リソソームへの輸送・分解にユビキチン化が必須であるのか? 3) ユビキチン化の分子機構(ユビキチンリガーゼの同定および生理的条件下でのユビキチン化の制御) 4) ユビキチン化あるいはリソソームでの分解を阻害するとどのような機能変化が起こるのか? などについて細胞・分子レベルでの解析を行っている。

著者関連情報
© 2007 日本プロテオーム学会(日本ヒトプロテオーム機構)
前の記事 次の記事
feedback
Top