日本プロテオーム学会大会要旨集
日本ヒトプロテオーム機構第7回大会
セッションID: S4-1
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基礎生物学とプロテオミクス(翻訳後修飾、リン酸化)
質量分析法による翻訳後修飾の構造解析
*高尾 敏文
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抄録

近年、MSの発展により蛋白質の構造解析は精度よく行えるようになった。特に、蛋白質分子にしばしば存在する様々な翻訳後修飾の解析に威力を発揮し、部位特異的な構造同定が効率よく行えるようになっている。蛋白質の翻訳後修飾には、糖鎖や脂質等による比較的大きな分子による修飾やリン酸化等による小さな分子による修飾が知られているが、これらの翻訳後修飾は蛋白質の機能発現に少なからず寄与している。本発表では、我々がこれまで見いだした翻訳後修飾の解析例について紹介するとともに、MSの翻訳後修飾解析における今後の役割と課題について述べたい。
Fig. 1aは、2006年に発見したWnt-3aの新規な脂質修飾パルミトレオイル基1)と、これまでに他のグループにより見いだされた修飾2),3)を示している。この修飾は、既によく知られているパルミトイル基と異なり、分子内に二重結合(C16:1, delta-9)をもつユニークな構造をしており、Wnt蛋白質の分泌に必須であることがわかった1)。この新規脂質修飾の発見の鍵となったのは、ナノLCにおいて、結合している脂質の違いにより修飾ペプチドを分離できたことである(Fig. 1b)。すなわち、脂質における二重結合の有無による分子質量の差はわずか2Daであるため、ここで用いたTOF/TOF型のMS/MSではそれらを分離して測定することは困難であったが、逆相LCにおいてそれらは比較的容易に分離することができた。
参考文献
1) R. Takada et al. Developmental Cell, 11, 791-801 (2006)
2) K. Tanaka et al. J. Biol. Chem. 277, 12816-12823 (2002)
3) K. Willert et al. Nature, 423, 448-452 (2003)

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© 2009 日本プロテオーム学会(日本ヒトプロテオーム機構)
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