主催: 日本ヒトプロテオーム機構
血清は多くの生物学的情報を含んでいる。従って、血清中のタンパク質・ペプチドを調べることにより、病気の早期発見、薬剤感受性、発症メカニズム等につながる有用な情報を得ることができる。しかし、血清中に存在するアルブミン、免疫グロブリンをはじめとした数10種類の高存在量タンパク質が総タンパク量の 99% 以上を占めていることに加えて、残り1% 中の数1,000種類のタンパク質・ペプチドの濃度は mg/mL から pg/mL と非常に広い。また、アルブミンなどのキャリアプロテインや各種癌に特異的なプロテアーゼの存在、生活環境・慢性疾患にともなう多種多様な副次的な作用、さらには、採取された血液の分離方法、分離までの時間、保存方法などが、個々のタンパク質・ペプチドの存在量に多様な変動を与える。このためそれぞれの疾患を直接反映する要素を引き出し、検査に応用するためには、多検体によるバリデーションを視野に入れた、存在量に応じた精度の高い分析法が必要となる。
我々は、以前より血清を対象とした独自の分析法の開発ならびに既存の方法の最適化を行い、臨床医、検査技師と共同で各種疾患の検査法確立に向けてマーカータンパク質・ペプチドの探索を進めている。
本シンポジウムでは、北里大学理学部附属疾患プロテオームセンター、千葉大学医学部附属疾患プロテオミクス寄付研究部門を中心に展開している診断マーカー確立に向けた様々なアプローチについて紹介する。