日本プロテオーム学会大会要旨集
日本ヒトプロテオーム機構第7回大会
セッションID: P-47
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ポスターセッション
細胞間接着形成過程におけるリン酸化プロテオーム解析
*増田 豪冨田 勝石濱 泰
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抄録

細胞間接着は近傍にある細胞と強固に結合するために必要な機構であり,細胞の分化やガン細胞の浸潤などに関わっていることが報告されている.一方,adherens junction (AJ)はカルシウム依存的に細胞間結合を形成する細胞間接着構造の一つであり,タンパク質リン酸化を介したシグナル伝達により制御されていることが報告されている.しかし,AJ形成過程におけるリン酸化シグナルネットワークは不明な点が多く,その全貌は明らかとなっていない.そこで本研究ではマウスの乳腺上皮細胞であるEpH4を用いてカルシウム依存的な細胞間接着過程の時系列変化に対する定量的リン酸化プロテオーム解析を行った.
EpH4細胞は10% FBSを含むDMEMで培養した.培地中からカルシウムを除去するためにEDTAでキレート処理を30分間行った後,カルシウムを含む通常の培地(DMEM, 10% FBS)に交換した.EpH4細胞を培地交換前および交換後15分,60分および24時間後に回収した.タンパク質は相間移動可溶化剤を用いて抽出・消化し,リン酸化ペプチドはHAMMOC法で濃縮した.
細胞接着過程の時系列リン酸化プロテオーム解析を行った結果,合計で1590種類のリン酸化サイト(pS/pT/pY:1318/212/60)が同定・定量された.その内151種類は細胞間接着に関わるタンパク質に由来していた.それらのリン酸化サイトを含む176リン酸化ペプチドを定量した結果,junctional adhesion molecule A (JAM-1)の285番目のセリンは細胞間接着が形成されるにしたがってリン酸化量が増加していた.ヒトの上皮細胞において,このサイトがリン酸化されたJAM-1は細胞間接着部位に局在し機能することが報告されている.また,ミオシン-9の1943番目のセリンは細胞間接着形成が進むにつれてリン酸化量が減少していた.このサイトは脱リン酸化されると細胞の運動性が低下することが報告されており,本実験においても細胞間接着形成により運動性が低下し,このサイトの脱リン酸化が促進されたと考えられる.この他にも我々はAJ関連分子の新規リン酸化サイトおよびその時系列変化を多数同定しており,大規模な時系列定量的リン酸化プロテオーム解析によりAJ形成過程におけるリン酸化プロファイルの一部が明らかとなった.

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© 2009 日本プロテオーム学会(日本ヒトプロテオーム機構)
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