日本プロテオーム学会大会要旨集
日本ヒトプロテオーム機構第7回大会
セッションID: S1-2
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プロテオミクスの医学への応用(その1) マーカー探索(組織)
創薬バイオマーカー探索のための抗体プロテオミクス技術
*角田 慎一堤 康央
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抄録

近年、創薬を志向したバイオマーカー探索研究が世界的に注目されており、中でも、健常状態と比較して疾患状態で質的・量的、時空間的に発現変動している蛋白質を網羅的に解析・同定しようとする疾患プロテオミクスは、とりわけ大きな期待を集めている。しかし、疾患プロテオミクスにより、ハイスループットな解析が可能となっている一方で、多数見出されてくる疾患関連蛋白質候補の中から、真に有用なバイオマーカーを効率よく絞り込むための基盤技術が未成熟であるため、プロテオミクスで得られた情報を有効活用できておらず、創薬への展開は大きく滞っている。本観点から我々は、疾患プロテオミクスにより同定される多数の候補蛋白質各々に対して、モノクローナル抗体を複数種類ずつ迅速かつ簡便に創製することで、創薬バイオマーカーの効率的な絞り込みを可能とする方法論(抗体プロテオミクス技術)を確立した。抗体プロテオミクス技術は、二次元ディファレンシャル電気泳動(2D-DIGE)解析により同定・回収される微量かつ多数の候補蛋白質を抗原として、ファージ抗体ライブラリを駆使することにより、最短2週間で、網羅的にモノクローナル抗体(ファージ抗体)を作製可能とするものである。さらに、取得したファージ抗体は簡便に増幅可能であり、かつそのまま、組織マイクロアレイ解析に適用することにより、多症例の臨床検体における発現プロファイリング・バリデーションを一挙に達成可能である。これまでに我々は、乳がんや肺がん等を対象として抗体プロテオミクス技術による解析を試み、悪性度診断マーカー、および新規創薬ターゲットとして有望な蛋白質を見出すことに成功している。また現在、それら蛋白質の機能解析を進め、興味深い知見が得られつつある。そこで本講演では、疾患関連蛋白質に対する迅速な抗体創製・バリデーションを可能とする上記抗体プロテオミクス技術の有用性と創薬への展開について、最近の成果を含めて紹介させて頂く。

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© 2009 日本プロテオーム学会(日本ヒトプロテオーム機構)
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