抄録
本研究の目的は、認知症高齢者を抱える家族介護の限界と、療養の場の選択との関連を明らかにすることである。現行制度において、高齢者は病院を早期に退院するように促されるが、療養の場を見つけづらい現状にある。中でも代替施設として住宅型有料老人ホーム(以下住宅型)が量的拡大している背景に注目した。そこで、住宅型Aに入居する高齢者46名中、15名の家族を対象に半構造化面接を実施し、入居に至るまでの経緯を分析した。その結果、認知症高齢者は、在宅介護や別居の家族の通い介護によって支えられていたが、家族介護は限界に至り、住宅型に入居を決めていたことが明らかになった。住宅型に入居が可能となった高齢者は、自己責任で療養の場を選択できた階層、または従たる負担者が入居費用を工面できた階層に属していたといえる。その一方で、自己責任で療養の場を選択できない階層の存在や次世代への介護問題の先送りという課題が示唆された。