日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー感染症学会誌
Online ISSN : 2435-7952
総説
頭頸部がんの光免疫療法
篠﨑 剛
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2022 年 2 巻 3 号 p. 91-96

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抄録

光免疫療法とは抗体-光感受性物質複合体であるアキャルックス®と光照射による治療である。アキャルックス®を投与し20–28時間後に690 nmの光を照射することによって色素は活性化し,複合体が結合した細胞にのみ迅速な殺細胞作用を誘導させることができるとされている。がん細胞のみを選択的に破壊すると同時に,腫瘍細胞を取り巻く正常組織の損傷を最小化することができると期待されている。

本邦では切除不能な局所進行又は局所再発の頭頸部癌に対して条件付で保険承認され,2021年1月1日より保険診療として行われている治療である。

切除不能な局所進行又は局所再発の頭頸部癌に対して光免疫療法が検討される。化学放射線療法等の標準的な治療が可能な場合にはそれらの治療を優先する。

入院にて薬剤投与と光照射を行う。投与中及び投与後は光曝露対策が必要であるため治療前から説明と準備を行う。前投薬として副腎皮質ホルモン,抗ヒスタミン薬を静注した後にアキャルックス®を2時間以上かけて点滴静注し,アキャルックス®投与終了から20–28時間後に全身麻酔下に光照射を4–6分間実施する。病変の大きさにより複数回にわけて行う。

術後4週間光曝露対策を行う。出血や舌腫脹,喉頭浮腫,皮膚障害などに注意し経過観察を行う。完全奏効が得られない場合には最大4回まで繰り返すことができる。

頭頸部扁平上皮癌に高発現しているEGFRを標的とした腫瘍選択性の高い強力な治療であり,今後の症例の集積により有効性・安全性を検討する必要がある。

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© 2022 日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー感染症学会
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