日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー感染症学会誌
Online ISSN : 2435-7952
症例報告
外科的切除を要した非結核性抗酸菌(Mycobacterium mageritense)による耳前部リンパ節炎の1例
松田 侑里米倉 修二須藤 智美栗田 惇也新井 智之飯沼 智久鈴木 眞山下 晃司松下 一之髙地 祐輔岸本 充花澤 豊行
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2023 年 3 巻 3 号 p. 101-107

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抄録

非結核性抗酸菌(NTM)によるリンパ節炎の多くは小児例であり,成人では免疫不全例以外での報告は少ない。今回,健康成人に発症したNTMによる耳前部リンパ節炎の1例を経験したので報告する。症例は41歳男性。右耳前部の腫瘤を主訴に近医耳鼻咽喉科を受診し,耳下腺腫瘍が疑われたため当科へ紹介となった。初診時,右耳前部皮下に20 mm大の可動性不良な硬結を触れ,超音波検査では右耳下腺上極の被膜付近から皮下組織へ広がる境界不明瞭・辺縁不整な腫瘤を認めた。MRI検査では被膜部分は造影されるが,内部は造影効果の少ない腫瘤性病変として描出された。穿刺吸引細胞診では悪性所見は認めず,炎症を伴う肉芽病変が示唆された。穿刺物の抗酸菌培養およびPCRは陰性であった。精査中に膿瘍形成後に自壊したため,膿汁を培養検査に提出したところ,質量分析法および遺伝子解析から起因菌は迅速発育抗酸菌であるMycobacterium mageritenseと同定された。感染症内科にコンサルトの上,sulfamethoxazole/trimethoprim合剤とlevofloxacinによる薬物療法を開始したが,2ヵ月間の抗菌薬投与でも改善が乏しかったため,局所麻酔下で外科的切除を行った。病理所見では乾酪壊死を伴う類上皮細胞肉芽腫を認め,NTMによるリンパ節炎として矛盾しない結果であった。迅速発育抗酸菌の治療方針は確立されておらず,患者の背景因子,病変の状態,および薬剤感受性などを考慮して,個々の症例に対応した治療を展開する必要がある。

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© 2023 日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー感染症学会
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