2023 年 3 巻 4 号 p. 179-183
アナフィラキシーは重篤な全身性の過敏反応で,診療の様々な局面で遭遇する。今回全身麻酔下手術後に,アナフィラキシーを発症した症例を経験したので報告する。
症例は9歳男児で,キウイ,アーモンド,落花生等の食物アレルギー歴はあったが,薬剤アレルギー歴はなかった。滲出性中耳炎の診断で全身麻酔下に鼓膜換気チューブ挿入術を施行した。ラテックス製でない手袋を使用し,セボフルランで導入後,フェンタニルクエン酸塩,ロクロニウム臭化物を静脈内投与し,気管内挿管した。セボフルラン,レミフェンタニル塩酸塩で維持し,手術終了20分前にアセトアミノフェンを投与,終了時にフェンタニルクエン酸塩を投与した。手術終了13分後にスガマデクスナトリウムを投与し,その3分後に抜管してから軽度の乾性咳嗽を認めた。帰室後も咳嗽は持続し,軽度喘鳴も聴取し,掻痒感のある皮疹が全身に広がったため,アナフィラキシー重症度グレード2と診断した。アドレナリン等の薬剤投与を行うと皮疹は速やかに消退したため翌朝退院した。
本症例では,退院後の血液検査でラテックスアレルギー,好塩基球活性化試験でスガマデクスアレルギーの確定診断を得た。併存している食物アレルギーやラテックスアレルギーに対処した上で手術を施行したが,スガマデクスによるアナフィラキシーは予期することが難しい。術前の最大限のアレルゲン排除と患者に合わせた方法による誘因薬剤の診断が重要である。