日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー感染症学会誌
Online ISSN : 2435-7952
原著論文
好酸球性副鼻腔炎に対するデュピルマブによる中耳炎への効果の検討
上原 奈津美横井 純由井 光子井之口 豪藤田 岳柿木 章伸丹生 健一
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2025 年 5 巻 1 号 p. 35-39

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抄録

はじめに:好酸球性副鼻腔炎の約10–15%で好酸球性中耳炎が合併するとされている。近年,バイオ製剤の治療が開始され好酸球性副鼻腔炎に対し重症例に適応が拡大された。今回我々は,バイオ製剤が導入された好酸球性副鼻腔炎症例において中耳炎への治療効果について検討を行ったので報告する。

対象:2016年から2023年に当院を受診しバイオ製剤治療を行った好酸球性副鼻腔炎症例のうち,中耳炎を合併していた6例12耳。男性3例,女性3例。

方法:中耳炎発症年齢,鼓膜所見,気管支喘息の有無,初診時平均聴力,バイオ製剤治療後平均聴力,中耳炎に対する治療歴について検討した。

結果:中耳炎発症年齢は39歳から70歳(中央値53歳)。鼓膜所見は滲出性中耳炎が3例,慢性中耳炎が3例。全例気管支喘息を合併。中耳炎に対し,バイオ製剤治療前は全例複数回の鼓膜切開及び局所ステロイド鼓室内投与が行われていた。また慢性中耳炎3例(大穿孔3耳)については,1例は両側鼓室形成術を行い,2例はバイオ製剤治療後に鼓膜穿孔が自然閉鎖した。滲出性中耳炎3例は治療後,液貯留を認めていない。バイオ製剤治療後に聴力改善を認めた。

考察:今回の検討では,好酸球性副鼻腔炎に伴う中耳炎について全例バイオ製剤で治療効果が得られていた。好酸球性副鼻腔炎に続発して中耳炎が発症することが多いため,好酸球性副鼻腔炎のバイオ製剤治療により中耳炎の予後も改善が期待される。

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