抄録
杏林大学医学部付属病院における、入院患者の摂食嚥下障害への取り組みについて紹介する。年間 3,000 件以上の救急車搬送があり超急性期の治療を積極的に行っている当院では、急性期の摂食嚥下機能評価を多数実施する必要があり、「言語聴覚士による摂食嚥下障害初期評価」と「耳鼻咽喉科医による喉頭・嚥下機能評価」という嚥下診療体制を整えた。さらに摂食嚥下障害看護認定看護師 1 名も加わり、嚥下障害に対するチームアプローチを行っている。耳鼻咽喉科が行った嚥下造影検査や嚥下内視鏡検査の所見などの情報を共有し、連携して診療にあたっている。病床数の多い病院では、さまざまな状況の摂食嚥下障害患者がいて、単独の診療科による対応では困難となることも少なくない。そこで当院ではさらに、複数の診療科の医師や多職種のコメディカルが、症例ごとに摂食嚥下の治療方針を協議するシステム (杏林大学摂食嚥下センター) も構築し、院内症例だけでなく外来患者の摂食嚥下障害への対応も開始した。今後は、「摂食嚥下パス」などを介して、病診連携など地域の医療連携にも取り組んでいく予定である。