Persistent Postural-Perceptual Dizziness(PPPD)の治療において、少量のSelective Serotonin Reuptake Inhibitor(SSRI)投与は副反応を軽減しながら治療継続に有用であることが確認された。20週以上経過を観察した症例中、内服継続中に再増悪を来した症例の検討からは、平均35.0週で再増悪し、その後、平均8.0週の追加投与で57.1%が改善した。これにより、平均43週以上の継続投与が推奨された。内服中断中に再増悪を来した症例の検討からは、内服中断前の内服期間(平均27.4週)と、内服中断中の再増悪までの期間(平均57.9週)に有意な相関関係があり、可能な範囲での長期処方をすべきであると考えた。再増悪後内服を再開し、改善傾向に至るまでに平均9.6週を要したことから治療案①では再増悪まで内服を継続する85.3週以上の投与を、治療案②では平均27.4週の内服後、平均57.9週休薬、その後10週程度の再投与が推奨された。PPPD治療継続期間の決定に本報告がその一助となると考えられた。
本研究でわれわれは、2013年1月から2020年3月までに福岡大学医学部耳鼻咽喉科学教室における扁桃周囲膿瘍症例を対象に、その臨床的特徴を分析した。対象はCTで膿瘍を確認し入院加療を行った117例で、詳細な分析ではCRP高値が入院日数と関連していた。特に下極型は高齢者に多く入院日数が長い傾向にあったが、下極型に対する外科的処置の有無による入院日数の差はなかった。CRP 12.2mg/㎗を基準に比較したところ、12.2mg/㎗以上の群で入院日数が長く、下極型が多くなる傾向だった。喫煙歴や飲酒歴、外科処置の有無は入院日数との関連を認めなかった。CRPは重症度指標として有用である可能性が示唆された。
本症例は、免疫抑制下にある骨髄移植後患者50歳女性に発症した蝶形骨洞炎が、翼口蓋窩および正円孔周囲への炎症波及を契機に、三叉神経第1-3枝全域の疼痛と三叉神経第2枝の感覚障害を来したまれな1例である。抗菌・抗真菌薬による保存的加療にもかかわらず症状が進行し、内視鏡下鼻副鼻腔手術(endoscopic sinus surgery:ESS)を行ったことで速やかに症状が改善したことから、本症例は急性副鼻腔炎に起因したと考えられた。蝶形骨洞は重要構造物と隣接する部位であるが故に、症状出現時の迅速な評価と治療選択が不可欠である。本報告は、免疫抑制状態における蝶形骨洞炎の臨床的警鐘および外科的治療の有用性を示す貴重な症例と考えられる。
上咽頭癌に対する化学放射線療法(chemoradiotherapy:CRT)後には、耳管機能障害や中耳粘膜の線維化、局所の血流障害などにより、鼓膜穿孔の自然閉鎖が困難となることがある。今回われわれは、CRT後の上咽頭癌患者に発症した鼓膜穿孔に対し、有茎耳後部頭蓋骨膜弁を用いた鼓室形成術を施行し、良好な治癒を得た症例を経験した。再建に血流の保たれたフラップを用いることにより、治癒環境の悪化した放射線治療後の中耳においても、鼓膜閉鎖を得ることが可能であると考えられた。
症例は46歳の女性。5年前にBasedow病の診断となりメルカゾールを開始されていた。しかしコントロール不良、甲状腺右葉に結節性病変を認めることから、精査加療目的に当院代謝内分泌内科紹介となった。血液検査でfree T3高値、TSH低値、抗TSH受容体抗体陽性を認めバセドウ病と診断された。99mTcシンチグラムにて甲状腺全体に集積を認めたが、右葉により強い集積を認めた。以上からMarine-Lenhart症候群と考えられ手術加療目的に代謝内分泌内科から当科紹介となった。甲状腺全摘術を予定していたが手術待機中に自殺を図り救命されたが、手術は中止となった。他院救急科、精神科での入院治療を経て再度手術を予定し直し甲状腺全摘術を施行した。甲状腺機能異常では精神神経症状を呈することもある。時に自殺企図につながる場合もあり、その病態に対しての十分な理解が重要である。
COVID-19感染による重症肺炎では長期の挿管治療を強いられることがあり、後に、重度の後部声門狭窄を発症することがある。症例は40代男性で、COVID-19による重症肺炎治療後に徐々に増悪する呼吸苦が出現したため当科を受診し、後部声門狭窄症Bogdasarian分類Type Ⅳと診断された。瘢痕切除を実施したところ症状に改善を認めたが、術後5カ月目には再狭窄し呼吸苦を訴えた。左披裂軟骨摘出術・瘢痕切除を行い、露出部の粘膜被覆により声門腔を維持した。その後は狭窄・呼吸苦は再燃せず気管孔閉鎖を達成した。COVID-19重症肺炎治療後に後部声門狭窄症を発症する危険因子については過去に複数の報告があり、本症例も高リスクであると考えた。COVID-19後の後部声門狭窄症に対しては病態や患者の希望に応じた治療戦略を検討することが重要である。
左披裂部開大障害症例に対し、CTで左披裂軟骨骨化ならびに左輪状披裂関節内側に及ぶ骨化を確認した。また輪状披裂関節内側の骨化部位から喉頭内側へ隆起した半球状の軟部腫瘤を認めた。腫瘤は左声門下後壁に限局し、基底部断面積は約8 mm2であり、同部位で披裂軟骨が内転位で輪状軟骨と癒着していることが示唆された。しかし甲状軟骨低骨化部から機能的喉頭超音波検査(FLUS)を実施し、左披裂軟骨のRotating、Rocking、Glidingを確認したことから輪状披裂関節固着を否定した。以上の結果から、関節固着は認めないが、披裂軟骨体部内側の腫瘤部で軟骨周囲組織が癒着していることが示唆された。音声治療を実施し、声帯開大制限所見の改善は認めなかったが、声門閉鎖が良好となり嗄声が改善した。CTとFLUSを併用することにより声門後部癒着症の診断、癒着部位の同定と輪状披裂関節固着の否定が可能であった症例を経験した。