耳鼻と臨床
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原著
  • 伊勢 桃子, 折田 頼尚
    原稿種別: 原著
    2024 年 70 巻 2 号 p. 51-56
    発行日: 2024/03/20
    公開日: 2025/03/20
    ジャーナル フリー

    就学前健診および学校健診を契機に熊本県福祉総合相談所で聴力精査を行い、実際に難聴の診断がついた症例について検討した。対象は就学前健診および学校健診で聴力要精査となった 29 例(男児 18 例、女児 11 例)で、実際に難聴の診断がついたのは 13 例であった。この 13 例は全例が就学前もしくは小学校低学年の児童であった。このうち、中耳炎を除いた一側難聴は 7 例、両側難聴は 4 例認め、両側難聴 4 例は全例が軽度感音難聴を呈していた。一側難聴や両側軽度難聴は、本人の自覚症状が乏しく、また周囲が気づいてあげることが困難であるため、就学前健診や学校健診は大変重要であると考える。

症例報告
  • 和田 昂, 荒井 康裕, 高田 顕太郎, 森下 大樹, 折舘 伸彦
    原稿種別: 症例報告
    2024 年 70 巻 2 号 p. 57-63
    発行日: 2024/03/20
    公開日: 2025/03/20
    ジャーナル フリー

    先天性外耳道閉鎖症は 1 万から 2 万人に 1 人発生する先天性疾患である。今回、片側性外耳道閉鎖症にコレステリン肉芽腫を合併した症例を経験した。症例は 4 歳、男児。出生時より右小耳症・外耳道閉鎖症・軽度の顔面形成異常のため他院の耳鼻咽喉科・形成外科で定期的に経過観察されていた。4 歳半での CT で後頭蓋窩の骨破壊を伴う乳突腔の軟部陰影を認めたため、真珠腫性中耳炎を疑われ当科紹介となった。精査の結果、外耳・中耳・内耳奇形を伴う真珠腫性中耳炎またはコレステリン肉芽腫の疑いで鼓室形成術・乳突削開術を施行した。手術では、乳突腔内に肉芽腫を認めたため摘出し、atresia plate と思われる厚い骨の隔壁を削開し耳管方向へ換気ルートを確保した。術後 1 年 9 カ月の CT で、含気化は良好で再発なく経過している。本症例のように、外耳道形成術の適応とならない中耳コレステリン肉芽腫症例では耳管方向への換気ルートの確保が重要である。

  • 和田 昂, 荒井 康裕, 高田 顕太郎, 森下 大樹, 折舘 伸彦
    原稿種別: 症例報告
    2024 年 70 巻 2 号 p. 64-69
    発行日: 2024/03/20
    公開日: 2025/03/20
    ジャーナル フリー

    先天性サイトメガロウイルス感染症(cCMV)は先天性難聴や進行性難聴を引き起こし言語発達遅延の原因となり得る。cCMV に先天性真珠腫を合併した報告は現在までに認めない。症例は 4 歳、女児。周産期異常なく出生し、新生児聴覚スクリーニング(NHS)は pass であったが、2 歳で発語を認めず、精査の結果 cCMV による両側難聴と先天性真珠腫と診断した。人工内耳手術および真珠腫手術を 2 回に分けて施行した。術後 10 カ月頃より発語を認めている。本症例のように NHS が pass でも、cCMV であると遅発性に難聴が進行し、難聴診断が遅れる可能性があるため注意が必要である。

  • 坂倉 朋代, 車 哲成, 有元 真理子, 楊 鈞雅, 川出 由佳, 小川 徹也, 藤本 保志
    原稿種別: 症例報告
    2024 年 70 巻 2 号 p. 70-77
    発行日: 2024/03/20
    公開日: 2025/03/20
    ジャーナル フリー

    蝶形骨洞真菌症は比較的まれな疾患である。しかしながら近年増加傾向にあることが報告されている。蝶形骨洞には解剖学的に重要な構造物が存在するため、蝶形骨洞真菌症は、手術により真菌塊の摘出を行うことが必要である。今回われわれは、外来処置により蝶形骨洞真菌症が治癒した症例と外来処置後も病態が残存し手術治療を行った症例の 2 例を経験したため報告する。さらに本 2 例と過去 5 年間に当科で経験した蝶形骨洞真菌症 18 例を比較検討した。蝶形骨洞真菌症では、画像所見にて蝶形骨洞自然孔が拡大もしくは真菌塊が自然孔外や後部篩骨洞に存在する場合には蝶篩陥凹を内視鏡下にしっかり観察することが必要である。蝶形骨洞自然孔外に真菌塊があればこれを除去することで、蝶形骨洞内の aeration が改善し本症例のように自然治癒もしくは蝶形骨洞内の炎症が軽快する可能性がある。

  • 浅井 淨二, 関谷 真二, 森部 一穂, 甕 里紗, 嘉味田 朝太, 岩﨑 真一
    原稿種別: 症例報告
    2024 年 70 巻 2 号 p. 78-83
    発行日: 2024/03/20
    公開日: 2025/03/20
    ジャーナル フリー

    鼻・副鼻腔領域には、皮膚や粘膜、軟骨など多彩な組織があり、これらを発生母地とする多彩な良性・悪性腫瘍が発生する。採血や免疫染色、染色体検査では診断がつかないことも少なくない。本症例では上咽頭腫脹に対して複数回生検を施行し HE 染色や免疫染色、フローサイトメトリーおよび染色体検査を行ったところ悪性リンパ腫が疑われたものの、確定診断には至らなかった。そこで遺伝子検査を行ったところ末梢性 T 細胞リンパ腫・非特定型の診断となった。悪性リンパ腫が疑われる場合にはその他疾患の鑑別を行った上で、遺伝子検査を行い TCR monoclonality の検索が役に立つ可能性がある。

  • 前田 耕太郎, 大野 純希, 岡野 慎士, 西 秀昭, 熊井 良彦
    原稿種別: 症例報告
    2024 年 70 巻 2 号 p. 84-89
    発行日: 2024/03/20
    公開日: 2025/03/20
    ジャーナル フリー

    背景:咽頭に発生する悪性腫瘍の多くは扁平上皮癌に代表される上皮由来の癌であるが、まれに粘膜下原発の悪性腫瘍を認める。今回われわれは下咽頭粘膜下原発の滑膜肉腫の 1 例を経験したので報告する。症例:50 歳、男性。咽頭痛を主訴に前医を受診した。画像検査で咽頭後間隙膿瘍を疑われ、経口的切開排膿術が施行されたが、術中、咽頭後間隙に充実性の病変が認められ組織生検が施行された。後日、滑膜肉腫の確定診断に至り当科紹介となった。悪性度が高く、十分な安全域の確保が必要と考え咽頭喉頭頸部食道摘出術を施行した。その後、早期に肺転移を来し、肺病変に対して複数回切除を追加し、化学療法を継続したが制御不能となり初回手術から約 5 年で原病死した。結論:咽頭粘膜下に発生する悪性腫瘍は発見が難しく、咽頭関連の主訴では常に鑑別として本疾患も考慮し早期の画像診断を積極的に検討するべきである。

  • 山野 貴史, 西 憲祐, 木村 翔一, 田中 隆行, 和田 佳央理, 大森 史隆
    原稿種別: 症例報告
    2024 年 70 巻 2 号 p. 90-94
    発行日: 2024/03/20
    公開日: 2025/03/20
    ジャーナル フリー

    喉頭癌放射線治療 17 年後の嚥下障害に対し、嚥下機能検査の結果に基づいた嚥下リハビリテーションを施行し、効果について客観的な評価を行った。放射線治療後に長期経過した晩発性嚥下障害に対しても、嚥下不能例など嚥下機能が廃絶しておらず、ある程度の機能が残存しているのなら、嚥下機能検査で病態を十分に把握した上でのリハビリテーションは効果があるものと思われた。

  • 嶋崎 絵里子, 山内 盛泰, 陣野 智昭, 倉富 勇一郎, 宮崎 純二
    原稿種別: 症例報告
    2024 年 70 巻 2 号 p. 95-100
    発行日: 2024/03/20
    公開日: 2025/03/20
    ジャーナル フリー

    甲状腺手術では、反回神経を温存するため慎重な手術操作が必要とされるが、反回神経はまれに鎖骨下動脈起始異常に伴い迷走神経から直接分岐する非反回下喉頭神経(non-recurrent inferior laryngeal nerve;NRILN)となることがある。今回、右鎖骨下動脈起始異常に伴う NRILN を認めた甲状腺腫瘍の 1 例を経験した。症例は 68 歳、女性。甲状腺良性腫瘍の診断で甲状腺右葉切除術の方針とした。術中に下甲状腺動静脈を同定し、その深部の傍気管脂肪織内で反回神経を探したが同定できなかった。輪状軟骨下縁で反回神経を同定し神経を追うと、迷走神経から直接分岐しており NRILN であることが分かった。術中に CT を再確認したところ右鎖骨下動脈の起始異常を認めた。甲状腺手術時には腫瘍やリンパ節の評価だけではなく、鎖骨下動脈の起始異常などの血管奇形がないかの確認もルーティンとすることが重要と思われた。

  • 竹村 隼也, 竹田 大樹, 折田 頼尚
    原稿種別: 症例報告
    2024 年 70 巻 2 号 p. 101-107
    発行日: 2024/03/20
    公開日: 2025/03/20
    ジャーナル フリー

    涙嚢原発悪性腫瘍はまれな疾患であり、初期症状は涙嚢炎に類似しており診断に苦慮することが多い。今回、われわれは涙嚢より発生し鼻腔に進展した扁平上皮癌を治療する経験を得たので報告する。症例は 30 歳のベトナム人女性で、初診時に妊娠 28 週であった。右鼻閉と鼻漏を主訴に来院し右鼻腔腫瘍を認め生検したところ扁平上皮癌の診断となった。妊娠中の若年女性であったため、産婦人科コンサルトを行い、妊娠 35 週に帝王切開で分娩をした。腫瘍は画像上眼窩内浸潤が疑われ、眼球摘出を含めた手術加療を第一に説明したが、本人の整容面での強い希望により化学放射線療法による保存的加療を行い、腫瘍は著明縮小を得たが残存した。化学放射線療法により著明縮小を得たことで、眼窩内容物は温存可能と判断し、眼球を温存する形で腫瘍切除術、および前額皮弁による再建術を行った。現在まで 1 年 11 カ月経過したが、再発・転移を認めていない。

臨床ノート
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