耳鼻と臨床
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症例報告
  • 北川 智介, 山本 修子, 鈴木 法臣, 原 真理子, 守本 倫子
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 69 巻 4 号 p. 267-276
    発行日: 2023/07/20
    公開日: 2024/07/20
    ジャーナル フリー

    ゴーハム病は全身の骨が融解してリンパ管組織に置き換わることによりさまざまな症状を来す疾患である。側頭骨の病変により聴覚障害を来したゴーハム病の小児 3 例を経験した。耳小骨の骨破壊によるものや、頭蓋底の骨破壊により生じた髄液漏で伝音難聴を来した症例や、内耳道周囲の骨破壊により生じた感音難聴症例と、3 例で骨破壊部位がそれぞれ異なった。ゴーハム病と診断されて経過観察していた患者の聴力が低下を来してから耳鼻咽喉科を初めて受診する場合もあり、有症状になる前から定期的に聴力の経過をみることで病勢をいち早く把握することができる可能性もある。ゴーハム病と診断された場合は定期的な側頭骨 CT 検査と聴力検査が必要と考える。

  • 原田 里佳, 小山 徹也, 岩﨑 教子, 中島 紘一郎
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 69 巻 4 号 p. 277-283
    発行日: 2023/07/20
    公開日: 2024/07/20
    ジャーナル フリー

    日本の結核罹患率は年々減少し、2021 年に結核の低蔓延国となった。日常診療で結核疾患と出会う頻度は少なく、臨床像も多彩であることから診断までに時間を要する症例も多いとされる。近隣のアジア諸国では依然として結核罹患率は高く、日本での外国生まれの患者数は増加傾向にある。今回、自覚症状出現後 1 週間ほどで高度混合性難聴を認め、約 1 カ月半で顔面神経麻痺を合併した結核性中耳炎を経験した。初診時の鼓膜は急性中耳炎様の所見を呈しており、これまでに報告されている結核性中耳炎の経過と比較すると短期間で症状の進行を認めた。ANCA 関連血管炎性中耳炎などとも鑑別を要する経過であり、結核菌は一般細菌検査では検出されないため、通常とは異なる経過を呈する場合には結核性中耳炎の可能性も念頭において抗酸菌検査・病理組織学的検査を行う必要があると考える。

  • 白石 千壽瑠, 田中 恭子, 矢野 実裕子, 波多野 孝, 折舘 伸彦
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 69 巻 4 号 p. 284-291
    発行日: 2023/07/20
    公開日: 2024/07/20
    ジャーナル フリー

    気管支喘息を合併した好酸球性副鼻腔炎術後に血管炎症状を発症し、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(eosinophilic granulomatosis with polyangiitis:EGPA)の診断に至った症例を経験した。症例は 61 歳、男性。鼻閉を主訴に受診し、鼻腔ファイバースコピー検査で両側鼻腔に鼻茸を認め、好酸球性副鼻腔炎疑いで内視鏡下鼻副鼻腔手術を施行した。術後経過は良好で退院したが、術後約 2 週間後に発熱、下痢、関節痛、両側下腿浮腫を訴え、血液検査で急性腎不全の所見を認め、緊急入院となった。再入院後下肢に紫斑が出現し、EGPA の診断でステロイドパルス療法、シクロホスファミド静注療法を施行した。症状は改善を認め、17 カ月経過した現在まで寛解を維持している。好酸球性副鼻腔炎の診療を行う際には EGPA 発症の可能性を念頭におき、全身症状を見逃さないことが早期診断、治療のために重要と考える。

  • 福井 健太, 塩野 理, 波多野 孝, 荒井 康裕, 折舘 伸彦
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 69 巻 4 号 p. 292-297
    発行日: 2023/07/20
    公開日: 2024/07/20
    ジャーナル フリー

    形質細胞腫は骨の孤立性形質細胞腫と骨以外に発生する髄外性形質細胞腫(extramedullary plasmacytoma:EMP)に分けられる。今回、われわれは鼻腔に発生した EMP 症例を経験した。症例は 75 歳、男性。主訴は左鼻閉および鼻出血。近医で左鼻腔腫瘍を指摘され、当科へ紹介となった。副鼻腔造影 CT では左鼻腔に 15 mm 大の造影効果を伴う腫瘍性病変を認めた。経鼻内視鏡下に腫瘍を摘出し、病理組織検査で EMP の疑いとなった。血清電気泳動法で IgG-κ タイプの M 蛋白が陽性、尿中 Bence-Jones 蛋白は陰性、骨髄穿刺で異常なく、ほかの臓器障害も認めなかった。以上より鼻腔原発の EMP と診断した。頭頸部領域の EMP は 5 年生存率が約 70 %と比較的良好であるが、局所再発例や多発性骨髄腫への移行例は予後不良とされているため、長期間の経過観察が必要である。

  • 宮﨑 瑞穂, 三橋 拓之, 栗田 卓, 佐藤 公宣, 梅野 博仁
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 69 巻 4 号 p. 298-305
    発行日: 2023/07/20
    公開日: 2024/07/20
    ジャーナル フリー

    鼻性頭蓋内合併症の 3 例を経験した。いずれの症例も内視鏡下鼻副鼻腔手術と外切開によるドレナージを施行した。そのうち 2 例は治療が奏功し後遺症なく治癒したが、1 例は発症から治療介入までに時間を要し、最終的に死亡に至った。鼻性頭蓋内合併症は早期の診断と治療介入が重要である。発症早期より広域スペクトラムの抗菌薬投与を行いながら、全身状態が許容すれば早期に手術をする必要がある。内視鏡下鼻副鼻腔手術のみではドレナージが不十分であることもあり、必要に応じて脳神経外科医と連携して治療戦略を立てる必要がある。

  • 首藤 洋行, 門司 幹男, 岩永 康成, 山内 盛泰, 倉富 勇一郎
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 69 巻 4 号 p. 306-310
    発行日: 2023/07/20
    公開日: 2024/07/20
    ジャーナル フリー

    症例は 30 歳、男性。反復する両側膝関節炎に伴う発熱・咽頭痛の精査目的に当科紹介受診となった。口蓋扁桃は埋没型であり発赤や膿栓は確認できなかったが、血液検査で ASO 高値を認めた。溶連菌感染後反応性関節炎と考え口蓋扁桃摘出術を行ったところ、両側とも癒着中等度で膿栓が付着しており、病理組織検査でリンパ組織過形成および陰窩膿瘍を認め慢性扁桃炎の所見であった。術後、膝関節炎は徐々に軽快し現在まで再燃していない。反復する関節炎が扁桃炎に起因し病巣扁桃疾患と考えられる溶連菌感染後反応性関節炎である可能性があり、その治療として口蓋扁桃摘出術が有効であることを念頭において診療することが重要である。

  • 佐久間 巴, 波多野 孝, 高橋 秀聡, 加藤 生真, 藤井 誠志, 折舘 伸彦
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 69 巻 4 号 p. 311-317
    発行日: 2023/07/20
    公開日: 2024/07/20
    ジャーナル フリー

    横紋筋肉腫は小児では最も高い頻度で発生する悪性軟部腫瘍である。傍髄膜・眼窩を含む頭頸部領域は好発部位とされているものの、下咽頭での発生は非常にまれである。今回われわれは、成人下咽頭に発生した胞巣型横紋筋肉腫の症例を経験したため報告する。症例は 64 歳、男性。下咽頭左梨状陥凹に腫瘍性病変を認め、咽頭喉頭頸部食道摘出、遊離空腸再建手術を施行し、胞巣型横紋筋肉腫の診断を得た。術後補助化学療法として vincristine、actinomycin D、cyclophosphamide(VAC)療法を施行し、術後 3 年以上経過した現在まで再発を認めていない。近年、予後不良因子として FOXO1 関連融合遺伝子のほかに TP53MYOD1 変異が報告されている。今後、分子病理学的特徴を含めたリスク層別化や治療方法の個別化を行うことが、成人横紋筋肉腫の予後改善のため期待される。

  • 藤田 尚晃, 福田 裕次郎, 三宅 宏徳, 原 浩貴
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 69 巻 4 号 p. 318-324
    発行日: 2023/07/20
    公開日: 2024/07/20
    ジャーナル フリー

    Plummer-Vinson 症候群は、鉄欠乏性貧血に舌炎、嚥下障害を伴う疾患である。今回報告した症例は 48 歳、女性で、1 年前から徐々に進行する嚥下困難感を認めていた。初診時所見で眼瞼結膜の蒼白化と舌乳頭の萎縮を認め、鉄欠乏性貧血の存在を疑った。嚥下障害の増悪を認めるも喉頭知覚低下や咽頭クリアランスが保たれていることから食道期の嚥下障害を疑った。上部消化管内視鏡検査と食道造影の結果より、下部食道の上皮内癌を伴う Plummer-Vinson 症候群と診断した。鉄剤投与後 2 カ月で貧血は改善し、食道 Web 消退と嚥下障害の改善がみられた。治療 6 カ月後に内視鏡的粘膜下層剝離術を行い、早期食道癌と診断した。Plummer-Vinson 症候群において悪性腫瘍が合併することが知られ、耳鼻咽喉科頭頸部外科領域の診察にとどまらず、上部消化管内視鏡検査の依頼のほか、必要に応じて他科と連携して、定期フォローを行う必要がある。

  • 藤原 義宜, 大橋 充, 中川 尚志
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 69 巻 4 号 p. 325-331
    発行日: 2023/07/20
    公開日: 2024/07/20
    ジャーナル フリー

    多発血管炎性肉芽腫症(granulomatosis with polyangiitis;GPA)は上気道や肺の壊死性肉芽腫性血管炎、糸球体腎炎、中・小血管の血管炎を臨床病理的特徴とする疾患である。 本疾患の初発症状が上気道に高頻度で認められることから、耳鼻咽喉科医がその診断や治療に重要な役割を担う。口腔内症状が出現することはまれとされているが、歯肉には strawberry gum と称される本疾患に特徴的な病変を生じることが知られている。今回われわれは strawberry gum が初発症状となり GPA の早期診断に至った症例を経験したため報告する。症例は 24 歳、女性。2 週間続く歯肉の腫脹を主訴に、近医歯科より当院を紹介受診された。歯肉に特徴的な点状出血を伴う腫脹を認め、strawberry gum の所見と考えた。さらに鼻前庭に粘膜炎症、CT で肺結節陰影を認め、歯肉生検の結果、GPA の診断に至り、ステロイドと免疫抑制剤の併用療法で改善に至った。特徴的な歯肉病変である strawberry gum が GPA の早期診断に重要な手掛かりとなった。日常診療において着目すべき所見であると考える。

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