われわれは中耳真珠腫新鮮例に対し、原則として一期的に外耳道後壁保存鼓室形成術を行っており、乳突蜂巣の発育が不良な症例には外耳道後壁削除・乳突開放型の手術を選択している。真珠腫の分類や術式ごとの治療成績の検討のため、2013 年 1 月から 2020 年 12 月までに初回手術を行った 131 例について聴力改善率と再発率について後方視的に検討を行った。聴力改善率については既報と遜色がなかったが、IV 型症例では不良であった。再発率について、内視鏡による補助的な観察と、上鼓室の前方換気ルート開放の有用性に関して検討を行った。遺残再発率は、内視鏡導入後は有意差を認めないものの低下した。再形成再発は前方ルート開放を行った症例では少なかった。
歯性副鼻腔炎は、齲歯や歯周病に伴って起こる副鼻腔炎であり、治療にて耳鼻咽喉科や歯科での診断治療を要するが、現在、治療方針については定まっていない。今回われわれは、歯性副鼻腔炎の診断と治療に関する検討のために当院耳鼻咽喉科と歯科で併診された歯性副鼻腔炎 42 例を対象に後方視的に検討を行った。抜歯を行わずに治癒に至ったものが 17 例、抜歯を行ったものが 25 例であった。このうち、内視鏡下副鼻腔手術(endoscopic sinonasal surgery : 以下 ESS)と抜歯を同時に行った症例が 10 例、抜歯を行うも改善しなかったために ESS を行った症例が 6 例であった。今回の検討では、上顎洞の穿孔があり、そのサイズが大きい症例では抜歯を治療として選択する傾向があり、副鼻腔炎の病変数が多いものは抜歯も ESS も治療として選択されることが多かった。今後歯科とも治療方針を策定し、前向きの研究を行うことが必要であると考える。
鼻中隔弯曲症や肥厚性鼻炎を有する患者の中には慢性的な頭痛が存在する場合がある。当施設にて過去 4 年間に鼻中隔矯正術を施行した 63 例のうち頭痛症状の訴えがあった 8 例の手術後の頭痛の改善について retrospective に検討した。63 例のうち副鼻腔 CT や鼻内視鏡所見にて鼻粘膜接触点がみられた症例は 58 例であり、そのうち 8 例に頭痛を認めた。8 例のうち 7 例において手術後に頭痛の消失もしくは改善を認めた。頭痛が改善した 7 例すべてがアレルギー性鼻炎を有していた。鼻中隔弯曲症およびアレルギー性鼻炎がある患者が頭痛を有する場合に、鼻中隔矯正術や下鼻甲介手術を行うことで頭痛を改善させる可能性があることが示された。さらに術前のリドカイン試験は鼻粘膜接触点頭痛を疑う患者に対して手術の有効性を予測する有用な方法であると考えられた。今後さらなる経過観察により頭痛を有する鼻中隔弯曲症の患者に対する手術治療の長期的な効果が明らかになると思われる。
2016 年 9 月 1 日から 2023 年 12 月 31 日に組織診あるいは細胞診で甲状腺未分化癌と診断され当院で治療を行った 24 例について臨床的検討を行った。1 年生存率は 41%であった。手術群の生存期間中央値は 12.8 カ月、非手術群は 4.7 カ月であり、手術群において有意に予後が良好であった。手術群のみの検討で、NLR 低値群、Hb・CRP 正常値群で有意に予後が良好であった。甲状腺未分化癌においても、患者背景や炎症性マーカーを加味して根治あるいは、局所制御目的に手術を行うことは、生命予後に寄与する可能性があると考えた。
悪性外耳道炎は糖尿病を基礎疾患に持つ高齢者に多くみられる難治性疾患であり、長期間の抗菌薬静注投与を要する例が多い。今回われわれは比較的短期間の抗菌薬静注投与後に、外来での経口抗菌薬投与を継続することによって寛解した悪性外耳道炎例を経験した。症例は糖尿病の基礎疾患を持つ 83 歳男性であり、耳痛を伴う右耳漏を主訴に外来を受診した。初診時は耳漏を伴う右外耳道の腫脹を認めたが、その後右顔面神経麻痺を発症した。諸検査の結果、外耳道に限局した悪性外耳道炎と診断し、入院の上抗菌薬静注投与を開始したが、本人および家族の希望が強かったため入院治療は 9 日間で終了し、外来での経口抗菌薬治療に変更して 25 週間継続した。治療終了後現在まで外耳道炎の再燃はないが、顔面神経麻痺は残存している。
反復性の鼻出血に対しては適切な対応が重要である。今回われわれは、内頸動脈仮性動脈瘤に起因した大量の鼻出血を反復した 2 例を経験したので報告する。症例は既往歴のない 65 歳女性と、10 年前に下垂体腺腫に対する経蝶形骨洞手術および術後ガンマナイフ治療を施行された 68 歳男性である。いずれも大量の鼻出血を来し、その後の画像検査で内頸動脈瘤が明らかとなった。血管内治療の目的に当院紹介となり、脳神経外科による内頸動脈塞栓術によって止血が得られた。難治反復性の大量鼻出血の原因として内頸動脈仮性動脈瘤を念頭に置き、疑わしい場合は速やかに造影 CT を施行することが肝要である。
鼻副鼻腔低悪性度非腸管型腺癌 (low-grade non-intestinal type sinonasal adenocarcinoma:LG-non-ITAC) の 1 例を経験した。症例は 77 歳、女性。左鼻腔を充満する腫瘍に対し内視鏡下切除を施行した。切除断端は陰性で、術後 1 年半以上経過しているが再発を認めていない。術前診断で鼻副鼻腔腺癌を疑う場合、切除断端陽性の non-ITAC 症例は予後不良であるため、切除断端が陰性となるような術前プランニングが重要と考える。その上で、切除が可能であれば、内視鏡下切除は侵襲が少なくよい適応と考えられた。術前血管塞栓術は腫瘍への栄養血管を塞栓することで、術中出血の減少による内視鏡下の視野確保および腫瘍容積縮小に寄与し、確実な腫瘍切除の一助となり得ると思われた。