抄録
救急車を要請して当院を受診した平衡機能障害患者、特に転倒患者について臨床像を検討した。2008 年 10 月 1 日から 12 月 31 日までの 3 カ月間に千鳥橋病院を「救急車で」受診した患者 879 名を対象とした。救急車出動理由として転倒は 8 %、めまい・ふらつきは 7 %だった。転倒もふらつきも 50 歳代から 80 歳代に多く、原因はつまずきが最も多くて約半数を占めており、年齢が進むにつれて増加した。転倒した 70 名のうち 19 名が骨折していた。大腿骨骨折だった 9 名が手術を必要としたが、全例 70 歳以上であった。リハビリ目的に他院に転院せざるを得なかった割合は、手術例では 56 %、非手術例では 10 %に過ぎなかった。転倒は平衡障害の結果起こり、高齢化社会が進む日本社会において転倒予防は重要な課題である。今後は、われわれ耳鼻咽喉科医が転倒=平衡障害であることを認識し、平衡機能評価を通じて積極的に転倒予防に介入していくべきである。