当科で初回治療を行った同時性食道癌を有する下咽頭癌症例 19 例を検討した。上部消化管内視鏡検査で評価可能であった下咽頭癌 127 例の 15%に相当した。同時性食道癌の 42%が内視鏡治療可能な Stage 0 であった。19 例の 4 年粗生存率は 30.9%と不良であった。治療成績改善のためには、症例の 6 割以上を占める進行下咽頭癌の制御に加えて食道早期癌における後発リンパ節転移の制御が必要と思われた。また、p16 陽性中咽頭癌を合併した同時性下咽頭・食道癌の治療経過を提示した。喫煙と飲酒という従来の発がん因子と HPV 関連発がんの双方の関与が考えられ、その発症要因や治療経過に興味が持たれる症例であった。