2018 年 64 巻 3 号 p. 94-100
蝶形骨洞嚢胞により視力障害や眼球運動障害など多彩な眼症状を呈することは比較的知られているが、動眼神経麻痺を唯一の症状として呈した症例はまれである。症例は 65 歳、男性。 10 日程前から持続する右眼瞼下垂、複視および頭痛を主訴に近医受診、内服加療するも症状改善なく精査加療目的に当科紹介となった。副鼻腔 CT にて右蝶形骨洞外側壁は膨張性に変形・菲薄化を認め海綿静脈洞の圧排が示唆された。また、辺縁は整で内部は均一な軟部陰影を示した。当院眼科では右動眼神経麻痺と診断されており、右蝶形骨洞嚢胞が原因と考えられた。内視鏡下に右蝶形骨洞嚢胞開放術を行ったところ、術翌日より眼瞼下垂および眼球運動障害の改善傾向を認め、術後 55 日に眼症状は治癒した。本症例の動眼神経麻痺の成因には同神経の直接圧迫による障害に加え循環障害の関与が示唆された。