2018 年 64 巻 Suppl.1 号 p. S50-S55
日常臨床において甲状腺癌の気管浸潤をしばしば経験する。通常、気管表層の浸潤ではシェービング、気管内腔やその近傍まで浸潤を認める場合には窓状切除や環状切除で対応している。窓状切除においては開窓部閉鎖のために複数回の侵襲的な手術が必要となる。 環状切除では気管端々吻合を行うが、周術期の管理は難しく、患者の負担も大きい。これまで低侵襲な気管再建法の確立を目指し、さまざまな素材を用いて人工気管の開発が行われてきたが、その治療成績は安定せず、現在に至るまで一般に普及しているものはない。 われわれは、有効かつ安全な気管再建法の確立を目指し、生体内組織再生誘導型人工気管の開発に取り組み、医療機器としての実用化に向け医師主導治験を実施している。