耳鼻と臨床
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原著
きこえの困り感が生じている成人症例における聴覚情報処理の特徴
八田 徳高福島 邦博
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2020 年 66 巻 1 号 p. 1-9

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抄録

目的 : 聞こえの困難さを訴える成人症例の聴覚情報処理機能の特徴を明らかにする。対象と方法 : 標準純音聴力検査は正常で、日常生活で聞こえの困難さを訴える成人 12 例を対象とした。聴覚情報処理に関する検査を実施し、聞こえの困難さの原因について分析を行うとともに、注意や記憶など聞こえの困難さの背景要因についても検討するために神経心理学的検査および発達面、精神的問題との評価を実施した。結果 : 全症例中 11 例に何らかの聴覚情報処理に関する問題が生じていた。10 例で聴覚情報処理能の低下とともに認知特性、発達障害、精神障害など、他の要因が併存していた。考察 : 全症例中 1 例は、神経心理学的検査の結果では成績の低下はなく、発達障害、精神障害の問題が認められないことから聴覚情報処理障害の可能性が高いと考えられた。また、神経心理学的検査の成績低下や発達面または精神的問題のいずれかの問題が生じている症例では、聴覚情報処理能の低下は、他の要因から生じる聞こえの困難さが疑われた。以上のことから聴覚情報処理機能の評価では、通常の聴覚検査とともに神経心理学的検査を実施し、その背景にある要因について検証することの重要性を確認することができた。

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