抄録
外傷により嚥下障害が惹き起こされる場合には, 事故後直ちに症状の発現を見るのか通例である. その多くは頸部の諸組織の損傷とあいまつて神経系の挫滅に起因することが多い. 本症例も外傷により嚥下障害を生じたと考えられる1例であるが, ただ頸部外傷後かなりの期間を経て嚥下障害が出現している点, 他の症例とやや異なる. 幸いにも輪状咽頭筋切離により症状の消失を見た. 本症例はその臨床経過の特異性と共に, 術前術後の当該筋の筋電図による追跡結果に特異な像を示し, 興味ある所見と覚え, ここに報告する.