1990 年 36 巻 6 号 p. 1185-1188
8才女児の耳下部と上腕に重複して発生した, まれな石灰化上皮腫の1例を経験した. 石灰化上皮腫はそれほどまれな疾患ではないが, 耳鼻咽喉科領域での報告は少なく, 重複性のものの報告はない. 本症例の治療として腫瘍の外科的摘出を行い, その後再発は認めない. 本症例の病理組織像は, 石灰化上皮腫の病理組織の特色である陰影細胞, 塩基性生残細胞, 異物性巨細胞, 石灰化等を認めた. あわせて, 本邦における頭頸部領域での本腫瘍の報告について文献的検討を行い, 若干の考察を加えた.