抄録
誤嚥の治療として喉頭微細手術下にフィブリン糊とシリコンを使用した声門閉鎖術の結果を報告し, 本術式がpoor riskの患者の誤嚥防止対策として短時間に侵襲も少なく比較的簡便にできる有効な術式であることを報告した.
高齢・嚥下性肺炎・放射線治療後・基礎疾患などのリスクから, 手術侵襲をなるべく避けたい6症例に施行した. 声帯外側へのシリコン注入により声門を閉鎖し, 必要に応じて声帯辺縁粘膜を除去しフィブリン糊を用いて声門粘膜の癒着を促した.
本法の利点としては, 手技的に簡便であり, 手術時間も短く, 侵襲も少なく施行できる点にある. また喉頭の摘出に抵抗を感じる患者心理にとつても無理のない術式である. 問題点としては, 発声機能の喪失はほぼ不可逆的であること, 完全な喉頭閉鎖に至るまでには複数回の施行が必要な場合もあること, 喉頭の存在自体が嚥下の妨げになる可能性があることなどが挙げられる.