抄録
1990年から1994年までの間に宮崎医大耳鼻科では真珠腫性中耳炎138耳 (上鼓室型108耳, 癒着型30耳) を全例closed法で前鼓室開放術を施行し手術を行つたのでその術後成績 (再発と遺残) を調査した. 術後観察期間は半年から5年である. 全例の成績は再発5/138耳 (4%), 遺残8/138耳 (6%) であった. 真珠腫の型別に見ると上鼓室型真珠腫では再発3/108耳 (3%), 遺残7/108耳 (6%), 癒着型真珠腫では再発2/30耳 (6%), 遺残1/30耳 (3%) であつた. その再発, 遺残例で19歳以下の占める割合は上鼓室型真珠腫再発で2/3耳, 遺残5/7耳, 癒着型真珠腫再発2/2耳, 遺残1/1耳で再発, 遺残供に小児に多かった. 上鼓室前骨板は上鼓室型真珠腫で板状型47%, 錐体型30%, 前方型20%で癒着型真珠腫で板状型33%, 錐体型43%, 前方型20%, 粘膜ヒダ型3%であつた. 再発例の上鼓室前骨板をみると上鼓室型再発例では前方型2耳, 錐体型1耳で癒着型では錐体型1耳, 前方型1耳で板状型に再発例はなかつた. 再発例を再手術すると鼓膜張筋ヒダの部が骨性, 粘膜性に閉鎖しているのを認め, 錐体型, 前方型に前鼓室開放術を行う時は鼓膜張筋ヒダの部まで充分開存させることが重要と考えられた.