耳鼻と臨床
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耳性頭蓋内合併症の1例
大輪 達仁渡口 明宇良 政治
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1999 年 45 巻 5 号 p. 425-428

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抄録
59歳女性の耳性頭蓋内合併症例を経験した。右耳痛、発熱のため急性中耳炎として近医通院加療受けるも軽快せず頭痛も出現したため当科受診した。初診時耳内所見では弛緩部穿孔を認めるも明らかな真珠腫はなかった。顔面神経麻痺や眩暈はなかったが、聴力検査ヒ右耳65dBHLの伝音性難聴を認め、頭部CT、MRIでは右側頭葉の膿瘍形成と右中耳内に真珠腫を疑わせる骨破壊を伴った軟部組織陰影がみられた。髄膜炎も合併していたため広域抗生物質を投与し全身状態の改善を待って感染巣である真珠腫に対して右乳突削開術、鼓室形成術を行った。術後は順調に経過し、脳膿瘍もリファンピシン9週間投与により保存的治療でほぼ治癒した。中耳感染から脳膿瘍に至った場合でも、神経学的所見に問題がなく膿瘍が小さければ、感染巣の適切な除去と長期間の抗生物質の投与により保存的治療が可能と考えられた。
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