抄録
上顎癌で三者併用療法を施行した症例と、部分切除以上の手術および再建術を施行した患者の術後QOLをアンケート、鼻腔通気度検査、嗅覚検査で評価し、上顎再建の有用性を検討した。アンケートでは、1) 一般的評価では健康状態、運動能力、食事の満足度に関して広汎金摘、全摘ではやや低い傾向があったが、部分切除と三者併用療法症例では差異はなく部分切除における再建術の有用性が考えられた。2) 整容的な評価では広汎全摘症例で満足度が低い傾向があったが、全摘症例では非常に良好であり、三者併用療法症例ではむしろ顔面対称性や頬の高さに満足度の低い症例が見られた。3) 再建術施行によって鼻腔通気度が大きく低下した症例はなく、嗅覚に関しても広汎全摘症例以外は比較的良好な結果であり、鼻腔側壁を含めた再建術により良好な鼻腔機能が保たれていることが考えられた。