2000 年 46 巻 3 号 p. 190-196
当科において原発不明頸部転移癌の診断で初回治療を開始した16例について検討した。病理組織別には扁平上皮癌10例、腺癌2例、未分化癌1例、移行上皮癌1例、濾胞癌1例、悪性リンパ腫1例であった。このうち最終診断が初回生検時と異なる診断となったものが2例あった。転移したリンパ節は上深頸リンパ節7例、中深頸リンパ節7例に次いで、鎖骨上リンパ節が6例であった。原発巣が判明したのは6例であった。このうち経過中に判明したものが3例で、下咽頭、歯肉、膀胱各1例であった。剖検で原発巣が判明したものは3例で肺、胆嚢、子宮頸部であった。剖検でも原発巣が判明しなかったものは3例であった。病理学的に鰓性癌が疑われたものが1例あった。節外浸潤の有無を検討し得た12例のうち11例で節外浸潤が認められた。2年累積生存率は33.3%であった。これらの症例の取り扱いにおいては、早期に頸部郭清術を含めた積極的治療を開始し、さらに転移巣の病理組織像から検査を絞り込むことなく治療中も原発巣検索を行っていく必要があると考えられた。