抄録
上皮筋上皮癌は、全唾液腺腫瘍の1%以下を占めるにすぎないまれな唾液腺悪性腫瘍である。他院にて手術を受けるも再発を繰り返し、当科にて耳下腺全摘出術、顔面神経移植術を施行した、74歳女性の左耳下腺上皮筋上皮癌症例を報告した。術前から40点法で16点の左顔面神経麻痺が存在し、かつ術後放射線治療を行ったため、麻痺は6点までの回復にとどまっている。術後約3年経過して左頸部リンパ節転移を来し、頸部郭清術を施行したが、局所再発や遠隔転移は認めていない。この腫瘍は、局所周囲への浸潤傾向が強く高い再発率を認め、遠隔転移を来すこともあり、初回手術時に十分な拡大切除と厳重な経過観察が必要と考える。