耳鼻と臨床
Online ISSN : 2185-1034
Print ISSN : 0447-7227
ISSN-L : 0447-7227
突発性難聴を血管条性難聴とする実験的根拠
森満 保
著者情報
ジャーナル フリー

2005 年 51 巻 6 号 p. 456-462

詳細
抄録
陰イオン血管造影剤であるウログラフィン療法の成績から、突発性難聴の病巣は、血管条血管の内腔面と推定された。電顕的に、ウログラフィン分子 (以下、ウ分子と略す) がヨウ化銀として辺縁細胞の内リンパ腔面に密に観察された。また、シアル酸糖鎖を持つ陰性荷電部位が血管内腔面に観察された。これら陰性荷電部位はvoltage-sensitive Na+ channelと推定された。なお辺縁細胞の内リンパ腔面には陰性荷電部位は認められなかった2)。電気生理学的に、大山によって血管条細胞の陽性荷電が報告された。そこで、血管条の血管と構成細胞の間にionic charge barrierの存在が推定された。血管条内陽性電位はEPが呼吸停止や利尿剤で陰性に逆転しても、常に陽性電位を保つことも報告された。さらにNa+の血管条内注入で電位は有意に低下するが、K+の注入では不変であるとも報告されている。これら実験的根拠によって、ウ分子は正常耳では血管内腔に付着しえないが、突難耳では、内腔面の、受動的に陽性荷電した陰性荷電部に、イオン性に付着し治療効果を発揮するものと結論される。
著者関連情報
© 耳鼻と臨床会
前の記事
feedback
Top