抄録
嗅覚・味覚障害と微熱を主訴としたサルコイドーシス症例を経験した。症例は27歳、女性で診断のきっかけは患者もあまり病識を持っていなかった下口唇の小結節の生検にあった。Gaシンチを行ったがそこで両側耳下腺に集積が認められた。サルコイドーシスに嗅覚障害が合併する症例は極めてまれであるが、合併する症例のほとんどが両耳下腺腫脹を特徴とするHeerfordt症候群である。本症例には顔面神経麻痺は認められなかったが、その病態に近い疾患であったと思われた。嗅覚・味覚障害はサルコイドーシスの治療に従って漸次軽快し完治した事実はそれら症状もサルコイドーシスの関連症状であったと捕らえている。口腔内には全身疾患を反映する所見がいくつか知られているが口腔内を慎重に観察し、それらを確認することは患者をより深く理解する上で極めて重要であることを実感した。