抄録
唾液腺腫瘍は組織像が多彩で, 30種類を超える腫瘍型や種々の亜型が存在しており, 病理診断に難渋することが少なくない. しかしながら, 唾液腺腫瘍では, 病理学的な組織型によって, 多くの場合その生物学的態度が規定されるため, 腫瘍の組織分類を理解することが治療方針の決定や予後の判定には必要不可欠となっている. 国際的に広く認知されている唾液腺腫瘍の組織分類はWHO分類であると考えられるが, 2005年にはこの第3版目となる改訂版がPathology and Genetics of Head and Neck Tumoursとして刊行された. この新WHO分類では第2版の内容を踏襲しつつも, 発生頻度の低い腫瘍型 (リンパ腺腫, 明細胞癌NOS, 唾液腺芽腫など) がリストの中に新たに加わったこと, 第2版以降に報告された亜型や非常にまれな腫瘍型が記載されたこと, さらにはいくつかの腫瘍型では名称の変更が行われたこと, などの改訂がなされている. 本稿では, 唾液腺腫瘍新WHO分類の紹介を含めた病理組織学的分類の解説に加えて, 実際に病理診断を行う際のアプローチの仕方と注意点についても述べる.