日本耳鼻咽喉科学会会報
Online ISSN : 1883-0854
Print ISSN : 0030-6622
ISSN-L : 0030-6622
原著
低音障害型感音難聴における温度刺激検査の検討
木村 光宏濱村 亮次梅原 毅青井 典明佐野 千晶片岡 真吾川内 秀之
著者情報
ジャーナル フリー

2009 年 112 巻 8 号 p. 615-622

詳細
抄録

急性低音障害型感音難聴は比較的予後良好な疾患と一般的に考えられている.しかし, 長期間経過を観察すると, 反復したり, 再発したり, さらにはメニエール病へ移行する場合もあり, 治療に難渋することがしばしばある.
本疾患は, 厚生労働省急性高度難聴研究班の診断基準において, 急性あるいは突発性に蝸牛症状 (耳閉塞感, 耳鳴, 難聴など) が発症し, めまいを伴わない低音部領域のみの感音難聴であるとされている. しかし, 当科にて過去5年間に精査, 加療を行った急性低音障害型感音難聴31症例について検討したところ, 神経耳科学的検査において閉眼頭位, 暗所開眼頭位眼振検査で眼振を認め, 潜在的な末梢前庭機能の不均衡を認める症例や, 温度刺激検査で左右差を認めた症例は約半数におよび, その中には高度半規管機能低下 (緩徐相速度左右差60%以上) を呈する症例も認められた. これらの検討結果は, 急性低音障害型感音難聴においても半規管機能低下を呈する症例があり, 末梢前庭系にも障害が及んでいる可能性を示唆した.

著者関連情報
© 2009 一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top