日本耳鼻咽喉科学会会報
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総説
分子遺伝学から見た神経疾患の診断と治療
辻 省次
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2014 年 117 巻 12 号 p. 1423-1430

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抄録
 神経内科は, 発症機構が未解明の神経疾患が数多くあり, したがって, 効果的な治療法が確立されていない疾患が多く, このような疾患は, 神経難病とも呼ばれる. 分子遺伝学の飛躍的な発展により, 遺伝性神経疾患の多くでその病因が解明され, 解明された病態機序に基づく根本的な治療法の開発が進められるようになり, その一部は, 治験として実施され始めている. 孤発性神経疾患については, 次世代シーケンサーをはじめとするゲノム解析技術の飛躍的な発展により, 発症に関与する遺伝子の解明が進められるようになってきている. さらに, このようなゲノム解析技術は, クリニカルシーケンシングとして, 診断確定のための検査法として診療に用いられるようになってきており, 医療制度の中でどのように実装していくかが課題となっている. 病態機序の解明に基づき, 神経変性疾患に対する根本的治療法の開発が急ピッチで進められており, 今後, たくさんの治験が実施されると期待されている. また, 現在のところ, 臨床評価スケールが治験の primary endpoint と設定されることが多いが, 今後は, 病態機序を反映する surrogate marker の開発なども重要な課題となっている. 神経変性疾患は緩徐に進行する疾患であるが, 神経症状が出現する時期においては, 相当数の神経細胞の消失が既に生じていると考えられており, どの時点で開始するのが適切であるかなども含めて, 検討が必要である.
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© 2014 一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
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