日本耳鼻咽喉科学会会報
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総説
嚥下障害に対する耳鼻咽喉科医の役割
―耳鼻咽喉科一般外来における嚥下指導と嚥下訓練―
唐帆 健浩
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2014 年 117 巻 6 号 p. 782-787

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抄録

「飲み込む際にむせる」 「飲み込みにくい」 という嚥下障害を疑うような症状の患者は, 耳鼻咽喉科を受診することが多い. 日本耳鼻咽喉科学会が編集した 「嚥下障害診療ガイドライン」 には, 耳鼻咽喉科一般外来で行う嚥下障害の診療指針が示されており, 診療所などの耳鼻咽喉科一般外来を担当する医師が自ら, 基本的な診察と嚥下内視鏡検査を経て, 嚥下障害患者への対応を決めることを推奨している. すなわち, 自身で嚥下指導・訓練を行うか, より専門的な医療機関へ紹介するかを判断することになる. 一般外来で施行が可能な嚥下指導や嚥下訓練にはかなりの制限があるが, 対象を絞ることで対応は可能となる. 一連の診察および検査を行った結果, 嚥下内視鏡検査で何らかの異常を認めるが明らかな誤嚥がなく, 精神・身体機能は嚥下指導を行う上で十分に維持されている患者, 例えば, 液体嚥下の際に, 軽度の喉頭流入を認めるだけの, 認知症のない高齢者などが対象となる. 加齢により, 嚥下動態にはさまざまな変化がみられ, これらが相互に作用して, 代償ができなくなる高齢者は少なくない.
嚥下指導とは, 食事に適した食事環境, 姿勢・頭位や食形態の工夫など一般的な誤嚥予防や対応策を説明することである. 嚥下訓練とは, 嚥下動態を考慮して機能の改善を図り, 安全な経口摂取を目指す訓練である. 嚥下指導や訓練は, 条件を満たせば診療報酬を算定することが可能である. 医師の指導のもとに看護師や准看護師が, 口腔ケアや嚥下指導を行う場合にも摂食機能療法として算定できる.
一般外来で嚥下障害のトリアージを行い, 自身で嚥下指導と訓練を行うには, 知識と技量がある程度必要である. 経験が不十分であれば, 日耳鼻嚥下障害講習会等にて, 嚥下機能評価や嚥下訓練の手技を学ぶことが望ましい. 耳鼻咽喉科一般外来で, 嚥下障害診療が広く行われるようになることを期待したい.

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© 2014 一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
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