日本耳鼻咽喉科学会会報
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総説
睡眠からアプローチする認知症予防
宮崎 総一郎北村 拓朗野田 明子
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2019 年 122 巻 12 号 p. 1475-1480

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抄録

 24時間社会の今, 人々の生活スタイルは夜型化し睡眠時間は確実に減少している. 短い睡眠時間でも日常生活に問題なければよいが, 実際には睡眠不足によりもたらされる影響は, 肥満, 高血圧, 糖尿病, 心血管病, 精神疾患等多岐にわたり, 看過できるものではない. 睡眠は「疲れたから眠る」といった, 消極的・受動的な生理機能ではなく, もっと積極的かつ能動的であり,「明日によりよく活動するため」に脳神経回路の再構築 (記憶向上), メンテナンス (脳内老廃物の除去) を果たしている.

 睡眠不足や質の悪い睡眠は認知症の促進因子となり, 逆に, 質の良い睡眠は抑制因子となることが近年明らかにされてきている. また, 耳鼻科医が関与することの多い閉塞性睡眠時無呼吸は間歇的な低酸素や高二酸化炭素血症, および頻回な覚醒反応により, 肥満・高血圧・糖尿病・脂質代謝異常症などの生活習慣病と深く関連していることが報告されている. さらに最近の研究で, 認知症発症に対して睡眠時無呼吸が影響を及ぼしていることがいくつかの大規模研究によって示されている.

 今後, 睡眠の観点からも認知症予防に取り組むことが必要であり, 特に30代から50代までの若い世代の睡眠不足や睡眠障害,睡眠時無呼吸に対する早期診断, また若年者からの睡眠教育が第1次予防として重要であると考える.

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© 2019 一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
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