2021 年 124 巻 5 号 p. 709-714
肺炎球菌ワクチン施行後に, 世界的にも本邦においても小児急性中耳炎の起炎病原菌比率が大きく変化し中耳貯留液から検出される肺炎球菌比率が減少した. 全国サーベイランスの2012年と2017年の比較では肺炎球菌は31.2%から10.2%に減少し, インフルエンザ菌は32.5%から38.0%に増加した. また肺炎球菌の耐性菌比率は非耐性菌が65.9%から97.7%に増えた. 海外報告のコホート研究でも発症頻度は減少していた.
鼻咽腔と中耳の細菌叢の変化では, 鼻咽腔に同一菌種の細菌叢が有意に認められる場合は貯留液中でも高い確率で同一菌種が検出される (肺炎球菌は40~50%, インフルエンザ菌では50~67%). 鼻咽腔に複数の細菌叢が有意に認められる場合には肺炎球菌に比べインフルエンザ菌の検出される確率が Real time PCR コピー数では2.4倍高く, 培養陽性率は4倍であった.
小児急性中耳炎中等症の第一選択抗菌薬のアモキシシリンとクラバモックス小児用配合ドライシロップの治療経過比較では, 治癒改善率が1週目と3週目でクラバモックスが優れていた.
次の課題として難治例に遭遇した時, 低ガンマグロブリン血症, IgG サブクラス欠損症の確認が必要であり, もしそれが認められた場合はガンマグロブリン投与も治療の選択肢となる.
胃食道逆流症もなかなか思いつかない疾患であるが, そのような場合には胃食道内視鏡や pH モニターなどの精密検査も時に必要と考える.
一方で急性中耳炎は典型的な感染症であり, 予防という意味では徹底した公衆衛生観念が必要であることを新型コロナウイルス感染症から学んだ.