日本耳鼻咽喉科学会会報
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総説
内視鏡を用いた中・下咽頭癌の早期診断について
酒井 昭博
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2021 年 124 巻 5 号 p. 724-732

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抄録

 近年の内視鏡技術の発達により, 過去には発見できなかった表在癌が検出可能となってきた. 表在癌は主に中咽頭, 下咽頭に検出される機会が多いが, 微小病変を早期に診断することはなかなか困難なことも多い. われわれは Transoral Narrow Band Imaging(NBI) を用いた中咽頭癌の早期診断, Modified Killian's method(MK法) を用いた下咽頭の観察をルーチンとして行い, 従来の診察方法と比較して微小病変を同定する機会が増えてきた. 今回, 中・下咽頭癌の早期診断についてこの2つの方法の有用性について報告する.

 われわれは MK 法という新しい下咽頭観察方法を考案した. この方法は患者を過前屈させた状態で, 頭部を回旋させ Valsalva 法を行う. そうすることにより, 下咽頭が大きく開き, 下咽頭を全周性に観察することが可能となる. この新しい頭位での下咽頭観察方法は下咽頭を開く方法としては革命的であり, 通常の Valsalva 法と比較し, 有意に下咽頭の視野が改善することが証明された. 悪性疾患のみならず, すべての疾患における内視鏡検査において MK 法は非常に有用である.

 通常耳鼻咽喉科内視鏡検査は鼻から挿入して行う. しかしそれでは接線方向となる咽頭後壁や口蓋弓に隠れている扁桃, 舌扁桃溝などは大きな病変でないと視認することが難しい. そこでわれわれは通常の鼻からの観察に加え, 上部消化管内視鏡のように口から観察することを行っている. 患者に舌をガーゼで牽引させ, 経口的に内視鏡を挿入し, 発声させながら観察を行う. これにより, 中咽頭が一つの腔として観察でき, 併用して高解像度の内視鏡や, NBI 内視鏡を用いれば通常の視診では視認できないような病変が発見可能となる.

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