日本耳鼻咽喉科学会会報
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原著
炎症性腸疾患患者に合併した耳症状の社会的・心理的影響の質問紙調査
市原 寛子藤川 太郎伊藤 卓川島 慶之山本 桂倉田 奈都子本田 圭司渡邊 浩基大岡 知樹堤 剛
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2021 年 124 巻 6 号 p. 890-896

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抄録

 潰瘍性大腸炎 (UC) とクローン病 (CD) を含む炎症性腸疾患 (IBD) は慢性の腸管症状を繰り返すだけでなく, 全身のさまざまな腸管外合併症 (EIM) を伴うことが知られている. 本研究では難聴やめまい症状といった耳症状のある成人の IBD 患者11例 (女性9人, 中央値52歳 [範囲33~70歳]) を対象に質問紙調査を行い, 耳症状と腸管症状の関係と, それによる社会的・心理的影響を検討した. 患者 (UC が8例, CD が3例) の罹病期間は中央値13年 [3~28年] で, 全例が寛解し, EIM は3例に認めた. 耳症状は全例が感音難聴で, 6例 (55%) にめまいも認めた. IBD 発症年齢を基準にした耳症状の発症年齢は中央値5年 [-1~26年] で, 多くは10年以内に発症していた. 難聴は IBD の疾患活動性と独立し, 多くが変動性・反復性で, ステロイドに良好な反応を示した. さらに, Hearing Handicap Inventory for Adults と Vertigo Handicap Questionnaire のスコアは IBD の罹病期間との間に正の相関を示し (R=0.49, R=0.71), IBD 患者は長期にわたり難聴やめまい症状による社会的・心理的影響を受けていることが示唆された. IBD 患者に対して耳鼻科医による早期からの長期にわたる介入が重要であると考えられた.

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© 2021 一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
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