日本耳鼻咽喉科学会会報
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原著
扁桃周囲膿瘍入院患者210例の検討
小泉 祥太郎渡邊 健一石垣 賢人鵜沼 むつ貴織田 潔大山 健二
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2021 年 124 巻 7 号 p. 1013-1020

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抄録

 2017年5月~2020年7月までの3年3カ月間に, 当科で扁桃周囲膿瘍と診断し入院治療を行った210例を対象とした後方視的検討を行った. 年齢中央値37歳, 男性157例, 女性53例であった. 患側は左右ともに104例, 2例が両側, 膿瘍部位は上極型177例, 下極型が33例であった. 扁桃炎の既往歴は34.8%, 糖尿病の既往歴は2.9%, 喫煙歴は49.5%であった. 再発例は11例 (5.2%) であった. 治療方法は199例 (94.8%) で切開排膿を施行した. 検出菌では, 嫌気性菌が検出された症例は57.3%を占め, そのうち54.4%が好気性菌との混合感染であった. 入院期間にかかわる臨床的12因子 (年齢, 性別, Body Mass Index; BMI, 病悩期間, 糖尿病の有無, 扁桃炎の既往の有無, 喫煙歴, 開口障害の有無, 喉頭浮腫の有無, 膿瘍形成の部位, 初診時白血球数, 初診時 CRP 値) について統計学的検討を行ったところ, 膿瘍部位が有意差を示した. さらに入院7日間以上にかかわる因子も検討したところ, 同様に下極型の膿瘍部位のみが有意な臨床因子として抽出された. ほかの検討に比べ本施設では再発率が低く, 切開による十分な排膿が再発率を低下させた可能性があるが, 特に下極型の場合十分に注意して排膿を行う必要がある. 下極型扁桃周囲膿瘍を疑った場合, 早期診断, 適切な治療の判断のためにも造影 CT は有用であると考える.

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