日本耳鼻咽喉科学会会報
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コラーゲン製材の生体内変化に対する実験的研究
奥野 妙子船坂 宗太郎
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1980 年 83 巻 12 号 p. 1610-1615

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抄録

耳手術における入工材料の利用を目的として紫外線またはグルタールアルデヒドで処理した3種のコラーゲンのスポンジおよびシートを成熟家兎皮下に埋植し,経時的変化を調べる基礎実験を行った.
紫外線で処理したコラーゲンスポンジは,白血球浸潤,多核巨細胞の遊出などの反応も軽微で3~4週ですべて吸収された.グルタールアルデヒド処理のスポンジは,8週では線維の膨化,断裂を認めるもののなお原形をとどめており,白血球浸潤,多核巨細胞の遊出も紫外線処理のものに比べて著明であった.線維芽細胞の出現,自家コラーゲン生成なども見られ,スポンジ内へ肉芽増殖も認められた.つまり,紫外線のものに比べて異物反応がやや強いが,肉芽形成が勝り,組織との親和性もよく,充填剤として適当であると思われた.またシート状コラーゲンにあっては,これを直ちに外耳道後壁再建に利用するには,紫外線処理,アルデヒド処理ともそれぞれ難点があり,今後の検討を要するものと思われた.

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